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第5章 シャツ
シャツの基本
シャツの基本といえば、いつの時代も白です。
それは、最も汚れやすい白を常に綺麗に着続けることこそ、紳士の着こなしだという気持ちからきています。
ホワイトカラーという呼び名はここからきております。
20世紀初頭の服飾評論家はこのように言っております。
「縞模様や色付きのシャツ、ピケ地(凹凸の強い綿の生地)の襟をのぞかせているような連中は、成り上がり者と思って間違いない」
このことから連想しますと、映画「華麗なるギャツビー」の名シーン。ギャツビーがシャツを空中に放り投げる場面。
そのシャツは色とりどり、そして柄のオンパレード。
このシーンを思い返すと、ギャツビーが生粋の紳士ではなく、激動の時代に生まれた成り上がり者であることがわかります。
では、シャツにストライプのような柄が生まれたのはいつなのかと言いますと、1870年代になってからです。
レガッタシャツと呼ばれ、ビジネスウェアには不向きだとされました。汚れが目立たないから柄物を着るというような発想は、都会で働くビジネスマンにとってはありえないものでした。
1876年のエチケットブックには、
「模様を配したシャツ、縞柄のシャツが汚れを隠すというのは、間違った考えです。嗜み深き男性にとって、必要なものとは思えません」
と書かれていたそうです。
その後、襟とカフスに白無地を使うならということで、柄物のシャツがビジネスシーンで活用することが許されるようになりました。これがクレリックシャツです。
昔のシャツの形は、今のように前をボタンで開け閉めするものではなく、頭から被るプルオーバータイプでした。
それが今のような前開きの形になったのは、1871年以降と言われています。
シャツの前立てには大きく2種類あります。
プレイン・フロントと呼ばれる、前立てが後ろになぅている通称「裏前立て」という形。
もう一つが、プラケット・フロントと呼ばれる、前立てを二重に折り返し、ステッチをかけた「表前立て」という形。
印象の違いで言いますと、裏前立てはスッキリと洗練された印象になるのに対し、表前立てはかっちりと構築的な印象になります。
今の時代ですと、一般的は裏前立てが大半を締めています。
表前立ては主にアメリカントラッドのスタイル、ブルックスブラザーズやJ PRESS、ポロラルフローレンなど、アイビーのスタイルによく使われます。
剣ボロボタンの正式名称は、ガントレットボタンと呼びます。
このボタンは元々、軽く袖口を折り返した際、カフスのボタンホールに留めておくためのものでした。
今はそのような使い方をすることはなくなり、名残として残っています。
このことからも、剣ボロのボタンは開けておく方がスマートだということがわかります。
2024年5月擱筆
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