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第5章 シャツ
シャツは下着
シャツはどう着られてきたのか
シャツは元々、下着でした。今もそれは変わらないのですが、シャツの下にインナーを着たりと、昔と考え方が変わってきています。
戦前、日本でテーラーを営んでいた方が、当時の話をしてくださったことを聞いたことがあります。
イギリス人が採寸や納品をするとき、彼らがトラウザーズを脱ぐと、今の我々が履いているような下着(トランクス)を履いていなかったそうです。
当時は、現代のシャツの丈よりもずっと長いシャツを着用し、前身頃の裾と後身頃の裾にボタンが付いており、それを留めて、下着として着用していたのです。
そういった歴史から、シャツは下着だと現代でも言われています。しかし、日本にはふんどしがあったため、そういった着方が日本人には定着しなかったそうです。
シャツのインナーには何も着ないのか
シャツは下着であるから、中に何かを着ることは本来の着方ではありません。
そういう理解はありますが、わたしはシャツを素肌に着るのにどうも抵抗がある人です。いつも下に、VネックのTシャツを着用しています。もし、「シャツの下にインナーを着ている者は洒落者ではない」と言われたとしたら、わたしは落第生です。
わたしの意見としましては、西洋と日本は気候が大きく異なります。湿度の高い日本では、シャツを素肌で着ることで、汗じみが目立ち、べたつき、どうしても不快感が残ってしまいます。西洋の乾燥した気候とは異なるため、それぞれの国に合った着方を考える必要があるとわたしは思うのです。
余談ですが、革靴を素足で履くというのも同じことが言えます。高温多湿で、汗を大量にかく日本では絶対にやらないほうがいいです。洋服と素肌をどれだけ離せるかが、洋服を長く着るコツです。
先人の言葉を聞く
以前とある雑誌で読んだ話です。昭和中期のとある作家が真夏にも関わらず、毎日ホワイトリネン(白麻)のスリーピーススーツを着ていたそうです。(当時はエアコンもなかったので、相当暑かったと思います)
それを不思議に思った記者が、「なぜあなたはいつもスリーピーススーツを着ているのですか?」と訪ねました。するとその作家はこう語ったそうです。
「私は汗染みだらけのシャツを見せる行為ほど、失礼なことはないと思っているからだよ」
この言葉からも察する通り、このお方は、ファッションは決して自己満足のものではなく、他人に配慮をもっているものだということを理解していたということがわかります。
化繊ではなく天然素材を着る
極度の汗かきの方は特に、ポリエステルなどが入った化繊のシャツや、薄手の生地は選ばない方がいいです。合成繊維であるポリエステルは吸湿性に乏しく、汗を吸わないため、肌にべた付きが残り、不快感が残ります。汗をしっかり吸う綿100%や、吸湿性、速乾性の優れている麻を着ると、夏でもストレスなく快適に過ごすことができます。最近では、ポリエステル100%で清涼感を感じさせる生地で作られるシャツというのも売られてきていますが、やはり肌に直接触れるものですから、素材選びは慎重にしたいですね。
湿度の低い西洋では、シャツを素肌で着ても不快感がなく着られます。ですが、高温多湿の日本では、西洋と同じ洋服を同じ着方で着ると、身体にも洋服にも負担をかけます。自国に合った着方を、自分なりに考えて着るのがいいと思います。
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