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第3章 ジャケット
お台場仕立て
「お台場仕立て」とは、明治の職人達から生まれたテーラーの中で使われていた言葉でしたが、今では広く一般化した名称になりました。
上着の内ポケットをとり囲むように表地を切るこの仕様を「お台場」と呼びます。
<剣先台場>
<R台場>
これは昔、大砲の台場に形が似ていたことからこの名が付けられました。東京のお台場に形が似ているからという話もありますが、こちらは有力な説ではありません。
当時の偉い方に向けて作られていた高級な仕立てだったため、敬意を込めて「お」が付いていると言われています。
お台場仕立てにすることで、裏地の張り替えがしやすくなること、また表地をたくさん使用することから、高級な仕立ての証拠にもなるデザインで、今日まで重宝されました。
昔は今よりも頑丈な表地を使用していたため、表地が傷む心配はありませんでしたが、裏地は今普及している「キュプラ」や「ポリエステル」よりも耐久性に欠ける、「アルパカ」や「シルク」の裏地を使用していました。そのため、昔は上着の裏地を張り替えるということがよく行われていたのです。
その手の裏地はとても高級で美しい光沢を放ち、滑りもよかったので贅沢品として使われていました。しかし天然素材のため耐久性が乏しいため、5年10年と着ていると、表地は問題ないが、裏地が擦り切れてくるという問題が起こっていました。
今の裏地は合成繊維の技術の向上により丈夫なものになっているため、「お台場仕立て」はデザインのひとつとして親しまれています。
このお台場仕立てによる勘違いが巷であるので、ひとつお伝えしておきますと、お台場仕立てではないものは高級な仕立てではないと思われている方が少なからずいらっしゃいます。
しかしこれは間違いで、本国イギリスやイタリア、フランスでも、あえてお台場仕立てにしていないテーラーもいます。
お台場仕立てにすることで、胸の位置に厚みが生まれます。その厚みが立体感、理想的な曲線を損なうという意味で、あえて使っていない店もあることは、ぜひ知っておいて損はないでしょう。
モノづくりの意味、裏側まで知ると、人生がグッと深まり、楽しくなるはずです。
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