第6章 シャツ
カフスの歴史
現在主流となっているカフリンクスは1930年以降に一般化したもので、それ以前は細いチェーンが使われている物が主流でした。両面に同じデザインが施されているチェーンタイプのカフリンクスがクラシックです。
カフリンクス仕様のカフスは、「シングル・カフス」と「ダブル・カフス」の2種類あります。
正しくは「シングル・カフス」を「バレル・カフ」と呼び、「ダブル・カフス」は「フレンチ・カフ」と呼びます。「樽型の袖口」に対して、「フランス式の袖口」というわけです。しかし、英語で“フレンチ”という言葉が付くデザインには、あまりよい表現がないというのはなんとも皮肉な話です。「ダブル・カフス」がフォーマルだと思っている方もいらっしゃるかと思いますが、実はシングル・カフスのほうがよりドレッシーなシャツなのです。
<ダブルカフス>
昔のシャツは、襟とカフスを取り外しできる”デタッチャブル式”が基本で、そのときの襟とカフスは下敷きのように固いものでした。そのため、折り曲げることはできず、カフリンクスを通すだけで十分なハリが出ていたのです。
しかし時代の流れで、ハード・カラーのシャツがソフト・カラーへと変化していき、シングル・カフでは心細さを感じるほどまで柔らかくなったシャツに、カフスを二重に折り曲げることで、適度な固さと重厚感を残したデザインが、ダブル・カフスの始まりなのです。これがおよそ1850年以降からだと言われています。つまりダブル・カフスは略式デザインのため、皮肉めいた「フレンチ・カフ」という呼び名をイギリス人はつけたのです。いつの時代も隣国同士はあまり仲がよくないように、ファッションの歴史を知るうえでも、イギリスとフランスの仲を知っておくと、これまた面白いものです。
見た目の印象ですと、ダブル・カフスは重厚感、風格を感じさせ、重役など上の立場の人がしていると、説得力が倍加するような印象を与えます。新人がダブル・カフスをしていると、上司に冷たい目で見られる可能性もあるかもしれません。しかし、唯一男のフォーマルクロージングで貴金属を持ち込むことができる箇所です。ぜひとも若いうちから、物おじせずに挑戦していただきたいアイテムのひとつでもあります。
ダブル・カフスシャツを嫌味なく着るのはかなり難しいです。着こなしが確立されている人が少ない日本では、単純にビジュアルが格好いいという理由だけで、ダブル・カフスを選ぶ人が多いですが、これはあまりいいとは言えません。
まず、日本には趣味のいいカフリンクスが非常に少ないです。高級ブランドのネームバリューだけでカフリンクスを選ぶようでは、ダブル・カフスをスマートに着こなすことはできません。どこかの蚤の市で古いものを見つけて買ってきたような、主張をしていないものをさらっと着けているほうが、わたしは格好いいと思います。ダブル・カフスは、クラシックをこよなく愛し、全体のコーディネイトをしっかりとこなせる人が、初めて“粋”に着こなせるものです。
もうひとつ気をつけていただきたいのは、カフスとボタンを両方つけることができるシャツは買わないようにしてください。コンバーチブルカフスと呼ばれるもので、既製品でよく見かけます。そもそもカフスをつけるような人は、両方選べる仕様にするという甘い発想をしません。
もし購入したシャツにボタンが付いていてカフス穴が空いているのでしたら、ボタンを取ってしまい、カフス仕様にすることをオススメします。
また、既製シャツではよくありますが、シャツの袖口のボタンが2つ並列(アジャストボタン)してあり、サイズ調整ができるように並んでいる物。このディテールも一見しただけで、既成のシャツだということを知らせる仕様になります。どちらか一つ、サイズが合うようでしたら、もう一つは取ってしまいましょう。
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