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第5章 シャツ
カフス -シングル・ダブルカフス-
現在主流となっているカフリンクスは1930年以降に一般化したもので、それ以前は細いチェーンが使われている物が主流でした。両面に同じデザインが施されているチェーンタイプのカフリンクスがクラシックな形です。
カフリンクス仕様のカフスは、「シングル・カフス」と「ダブル・カフス」の2種類あります。
正しくは「シングル・カフス」を「バレル・カフ」と呼び、「ダブル・カフス」は「フレンチ・カフ」と呼びます。
「樽型の袖口」に対して、「フランス式の袖口」というわけです。
「ダブル・カフス」がフォーマルだと思っている方もいらっしゃるかと思いますが、実はシングル・カフスのほうがよりドレッシーなシャツなのです。
<ダブルカフス>
昔のシャツは、襟とカフスを取り外しできる”デタッチャブル式”が基本で、そのときの襟とカフスは下敷きのように固いものでした。そのため、折り曲げることはできず、カフリンクスを通すだけで十分なハリが出ていたのです。
しかし時代の流れで、ハード・カラーのシャツがソフト・カラーへと変化していき、シングル・カフでは心細さを感じるほどまで柔らかくなっていきました。
そこでカフスを二重に折り曲げることで、適度な固さと重厚感を残したデザインが考案されました。それがダブル・カフスの始まりなのです。これがおよそ1850年以降からだと言われています。
つまりダブル・カフスは略式デザインのため、皮肉めいた「フレンチ・カフ」という呼び名をイギリス人はつけたのです。
いつの時代も隣国同士は仲がよくないように、ファッションの歴史を知るうえでも、イギリスとフランスの仲を知っておくと、これまた面白いものです。
見た目の印象ですと、ダブル・カフスは重厚感、風格を感じさせ、重役など上の立場の人がしていると、説得力が増すような印象を与えます。
新人がダブル・カフスをしていると、上司に冷たい目で見られる可能性もあるかもしれません。
しかし袖口は、唯一男性のスーツスタイルで貴金属を持ち込むことができる所です。
私としましては、ぜひ若いうちから、取り入れていただきたいアイテムのひとつでもあります。
とは言いましても、この日本ではダブルカフスのシャツを嫌味なく着ることができている人は、あまり多くありません。
ダブルカフスのイメージ
ダブルカフスというデザインほど、意見が分かれるものもないのではないでしょうか。
「格好いい」「ダブルカフスのシャツしか着ない」「カフスを楽しめる」。etc
という肯定的な意見があれば、
「格好付けてる感じが嫌」「自分には似合わない」「カフスを着けている人はなんか、、」。etc
そのような声を聞くこともあります。
ですが、カジュアル化が進んだ今だからこそ、あえてドレッシーに装いを楽しむというのは、とても豊かな選択だとわたしは思います。
まず、ダブルカフスにあまり良いイメージがない方は、品のあるシックなカフスではなく、ブランドもののゴテゴテしたカフスをイメージしているかもしれません。これが日本のわるいところです。
ダブルカフスというシャツは、着方を間違えてしまうと、途端に安っぽく見えてしまうのです。
では難しいのか?初心者には着こなせないのか?と言いますと、そうではありません。
そのような少し華やかさがあるデザインこそ、シックに真っ当に着ることが大切です。
高級スポーツカーをこれ見よがしに走る方にあまり品を感じないように、一般的なデザインから離れていればいるほど、真面目に使う方が品が出るものです。
カフスの間違いない選び方
デパートや百貨店に行きますと、高級ブランドがこぞってカフリンクスを販売しています。ブランドロゴがデカデカとあるカフスが高額な価格で売られています。ですが、私はこのようなカフスを選ぶのはやめた方がいいと思っております。
なぜかと言いますと、ブランドの主張が強すぎてしまい、エレガントさに欠けてしまうからです。
お洒落な方はそういうカフスを着けている人を見ると、
「ブランドのネームバリューでカフリンクスを選んでいる人」
と思います。そういう選択をしているうちは、ダブルカフスを自然に嫌味なく着けられる人にはなれません。
メンズウェアの着こなしがいまだに確立されていない日本では、単純にビジュアルが格好いいという理由だけで、ダブルカフスを選ぶ人が多いのですが、これはあまりスマートではありません。
スーツに気を使う人が少ない日本では、カフスを着けているだけで、1%以下の人になります。その時点で珍しい人になるので、そこから先は何も手を加える必要がないのです。
全国民ダブルカフスを着けている国でしたら、その中で個性を出したくなるのはなんとなく分かります。ですが、すでに珍しいカフスを着けることを選んだ時点で、もうそれ以上付け加える必要はないのです。
ではどこで見つけるのがいいのか。これは正解はないのですが、私のお勧めといたしましては、どこか骨董市や、洋服屋のアクセサリー売り場で古い物をパッと見つけて買ってきたような、主張をしていないものをさらっと着けているのが、わたしは格好いいと思います。アンティークの物を身近に触れたことのない方からしますと、少しハードルが高いように感じられるかもしれませんが、むしろその逆です。
長く人に使われてきた物だからこそ、柔らかさがあり、気を衒った印象が全くありません。
ダブルカフスは、クラシックをこよなく愛し、全体の世界観を作り出すことができる人が、“粋”に着こなせるものです。
こちらのカフスは鳥の形をしたカフスですが、お客様のお名前に”翔”という漢字が使われていまして、”翔ぶ”と掛けて鳥のカフスをご提案しました。
”相馬”さんが”馬”のモチーフのカフスを選ばれたりするのも面白いでしょう。
その人の人生観をうまく活かした選び方ができると、より愉しさが沸くと思います。
シャツ選びで気をつけること
カフスとボタンを両方つけることができるシャツは間違っても買わないようにしてください。コンバーチブルカフスと呼ばれるもので、既製品でたまに見かけます。
これがなぜダメなのかと言いますと、そもそもカフスをつけるような人は、両方選べるという発想はしないからです。
もし購入したシャツにボタンが付いていてカフス穴が空いているのでしたら、ボタンを取ってしまい、カフス仕様にすることをオススメします。
洋服の着こなしを卓越していくためには、このくらい潔く洋服と向き合う方がいいのです。
また、既製シャツで、シャツの袖口のボタンが2つ並列(アジャストボタン)してあり、サイズ調整ができるように並んでいる物があります。
このディテールも一見しただけで、既製のシャツだということを知らせる仕様になります。これもどちらかひとつサイズが合うようでしたら、もう片方は取ってしまいましょう。
どの分野も、美しさは便利さの真後ろにあります。
最終編集2023年4月
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