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第4章 トラウザーズ
センタークリースの誕生
トラウザーズ(スラックス)にセンタークリースと呼ばれる、中央の折り目が付けられるようになったのは1880年頃といわれております。
これは、英国皇太子(後のエドワード七世)の影響から生まれたものといわれています。それまでのトラウザーズは、デニムと同じように横畳みでたたまれていました。
あるとき皇太子が旅行の準備をしていたとき、執事の者がトラウザーズを畳み間違えてしまい、前後に折り目ができてしまいました。しかしそれを見た皇太子は、「それもまた面白いではないか」と平気で外出したのです。
この折り目が前後に付けられたトラウザーズを見た人たちは、
「これがイギリス上流階級の新しい流行なのか」
と感心し、以後普及するようになったものといわれています。現在にも通ずる洋服のディテールは、偶然の産物が多いのです。
このクリースを付けるために、「ズボンプレッサー」というものが商品化されていますが、わたしはあまりお勧めしません。あの商品は、洋服のことを知らない人が考えついた物だと容易に想像ができます。
ホテルなどに置いてあるとついつい使ってしまいたくなりますが、ズボンプレッサーでクリースを綺麗に出すことはとても難しいです。
しっかりとラインを意識して挟んだとしても、少しでも間違えてしまうと、違うところにもう一本クリースを付けてしまうことがあります。
板状のもので一気に挟むので楽だというのはあるかもしれませんが、失敗したときの修復がとても大変です。
やはり多少面倒でも、かけるべきところにかけるということを意識した方がいいでしょう。
一番いい方法はやはりアイロンです。当て布をして、ゆっくりとシワを伸ばす。強くクリースを付けたいのでしたら、重いアイロンを使うか、上から体重をかけてしっかりとかける。そうすることでパリッと仕上がります。
大河ドラマを見ていたとき、袴を履いていた時代の話で、
「袴に綺麗な織りジワがないなんて男として情けない」
というセリフを見た時に感心しました。
いつの時代も、身だしなみを意識することは、人に自分はどう表れるか、という一つの測りであったことにかわりはないのでしょう。
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