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第9章 オーバーコート
アルスターコート
アルスターコートは、男性的でありながら、チェスターフィールドコートのような構築的な格好良さとはまた異なる魅力があります。
私は皆様に、チェスターフィールドコートをファーストコートとするならば、アルスターコートはセカンドコートとしてお勧めしたいです。
アルスターコートは元々、貴族階級のための旅行用コートとして使われるようになりました。
チェスターコートのような品格を感じながら、程よい力の抜け具合をこのコートで感じるのは、そういった由来から来ているのだと思います。
当時の旅行といえば今のように空調設備が整っていた時代ではありません。馬車で移動するため、極寒の中でも耐えうるコートである必要があります。そのため、長い着丈と、ボリュームのある素材選び、ゆったりとしたサイズ感が特徴的なコートです。
ここ数年で突然、巷に現れ始めたアルスターコートですが、歴史はとても古く、あらゆるコートの元祖となっている形です。
トレンチコート、ポロコート、タイロッケンコート、これらのコートの元ネタはこのアルスターコートです。
歴史は古く、1860年代まで遡ります。
前見頃はダブルの仕立てが一般的です。一見すると、「ダブルのチェスターコートと何が違うのか?」と思われる方も多いかもしれません。
下に、ダブルのチェスターフィールドコートと、アルスターコートを並べてみます。
<ダブル チェスターフィールドコート>
<アルスターコート>
アルスターコートの大きな特徴は、この襟の形です。
「アルスターカラー」と呼ばれるこの大ぶりな襟型は、クラシックな時代の名残を感じます。
細身細身、着丈も短く、というように、どんどんイジられモダナイズされているチェスターコートとは異なり、一線を引いている慎ましさをアルスターコートには感じます。
アルスターコートは基本的に今作られているものはダブルの仕立てです。過去にはシングルの仕立てのものも作られていたそうですが、今はほとんど見かけることはありません。
また、袖はボタン付きのものもありますが、ボタンが付いていない、またはターンナップカフのものが一般的です。
<袖はシンプルな筒袖>
私はアルスターコートはシンプルな方がより格好良さが引き立つと思いますが、誕生からの時代の流れで、数々の形が生まれてきました。
フードが付いていた時代もありましたし、ベルトが付いていて、前で結ぶ仕様にしていたこともありました。今でも背ベルトだけ付いているデザインのものもあります。
アルスターコートがあらゆるコートの形の元祖である由縁はそこでしょう。
この形にベルトを付け、エポーレットを付けたらトレンチコートに限りなく近づきます。
背中の真ん中にプリーツを付け、裾をインバーテッドプリーツにし、アウトポケットの蓋付きポケットにしたら、ほぼポロコートになります。
ボタンを無くし、ベルトで結ぶ仕様にして仕舞えば、タイロッケンコートです。
そういったところから、私は純粋なアルスターコートとして愉しみたい場合は、シンプルに着るのが理想だと思っているのです。背ベルトを付けたり、あれこれしていると、アルスターとポロコートの間のような、どっちつかずのコートになってしまうのは勿体ないと思うからです。
アルスターコートは、すでに形が完成されているコートです。下手に小細工をせず、サイズもコンパクトにせず、シンプルに素材と仕立てで楽しむのが理想だと私は思います。
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