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第1章 洋服の哲学
自分らしさとは

他の項目でも書きましたが、何事も覚えることの順番は守破離の順番が大切です。
まだ何も身に付いてないうちから自分らしさを出そうとすることほど野暮なことはありません。
極論ですが、私はこのクラシックスタイルには自分らしさを無理やり出す必要はないと思っています。伝統的なスタイルを学び、それに則った装いをすることが何よりも格好よく美しいからです。
不思議な話ですが、BERUNでも、BERUNらしさとは何か??と言われると、考えてしまうかもしれません。
なぜなら、わたしは伝統から学んだものを現代に落とし込むことに注力しているため、その途中に私らしさというバイアスを”意識的に”かけることは不必要だと思っているからです。
それでは法則に則った人たちが皆同じような佇まいになるかというと、決してそうではありません。どこのテーラーで作っても同じスーツになるかというと、至極当然そうではありません。その方の生まれ育った環境、人となり、染み付いているものが、その人の雰囲気を作り出しているからです。
つまり、100人が同じネイビーのスーツを着ていても、皆、見え方は違って見えます。
究極、自分らしさというのは、出そうとするものではなく、自然ににじみ出てくるものであり、それ以上の要素は不要なのです。
装いを極めることは人格を磨いていくことにつながるというところは、そういう部分にあります。
つまりBERUNも、作り手であるわたしらしさを出そうとしているのではなく、自然に出ているものがBERUNらしさとなり、意図的に作り出しているもの”は”ない、ということです。
自分らしさとは意識的に出すものではなく、無意識レベルで出てくるものです。基礎を磨き、型を覚えることが何よりも大切です。術に手を出すのはまだまだ先の話です。
ネクタイはこう結ぶと格好良く見える。マフラーはこういう巻き方がある、自分にはこういうチーフが似合う、などというような見せかけのファッションに惑わされる必要はありません。雑誌やSNSには耳を貸さず、己を磨き続けることです。
質実剛健なクラシックスタイルは、小手先の、パッと見格好よく見えるナンパなファッションとは異なります。クラシックスタイルの世界に足を踏み入れたいと思われたのなら、中身を磨くことに全力で愉しんでいただきたいです。
そしてしばらくすると、その方が流行を追い求めるよりも、何倍も充実しているし、愉しいということに気付かれると思います。だからこの世界はしれば知るほど、奥深く、果てしないのでやめられないのです。
形から入ることは悪いのか?
たまに、形から入る事は良くないという方がいらっしゃいますが、私はそうは思いません。
もしそれが悪いということであれば、生まれや育ちによって人生は決まってしまいます。自分が本当に送りたい人生を送ることができなくなってしまいます。
このメンズテーラードの世界は、実際はファッションとは縁遠い世界です。
見た目だけを楽しんでいるようでしたら、いつまで経っても本物に近づくことはできません。
まず、形からでもいいので、見よう見まねで着てみるということをやってみていただいたいのです。
そうすると、今までの自分ではない何者かになれます。そのときから、世界の見え方が少し変わることを感じていただいたいのです。
その変化を感じていただけたら、今までの自分の行動と、少しずつ変化していくと思います。
たとえばわたしで言いますと、20歳のときに初めてオーダースーツを着用したとき、
「この身なりの人は、ファストフード店には行かないな」
と、まず行かない場所を決めました。
すると、自ずと在り方が変わっていきます。
厳密に言いますと、初めて購入した百貨店のスーツのときは、そういった変化はありませんでした。そのあとに、今の師匠の元で仕立てたスーツを着たときに、はっきりとした意識の変化がありました。
仕立て屋に行くということは、洋服を仕立てるだけではなく、学びに行くというプラスアルファの教育の場でもあるということを実感した時でした。
テーラードは、ただファッションを楽しむということではありません。
その人の人生をより良いものにしていくことができるのが、本当の魅力です。
テーラードの世界は、見た目だけを楽しむファッションには気付くことができない、真の価値があります。
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