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第13章 アクセサリー
男が持つべき時計
時計ほど、男性のアクセサリーの中で一家言あるものはないでしょう。
私は過去に一度だけ、時計についての動画を出しましたが、やはり予想していた通り、賛否両論が繰り広げられました。
時計は男のステータスでもあり、どのような時計を選ぶかで、その方のセンスが顕になってしまうアイテムでもあります。
そのため、ただ有名で、高い時計を着けておけば良いという訳ではございません。
一人一人考え方の異なるアイテムだからこそ、こちらの項はあくまで「竹内はこう考えているんだな」くらいに留めておいていただき、ご笑覧いただけたらと思っております。
ここからは、私が考える時計論について少し書いていきたいと思います。
スーツに合う時計は
まず、スーツに合う時計についてお話ししていきたいと思います。
ここで考えるべきは、スーツという形がいつ完成されたのか、というところから考える必要があります。
なぜなら、これは時系列を合わせるのと同じことで、例えば、昭和初期の朝ドラの背景に地デジのテレビがあったらおかしいように、スーツが最も栄えていたときには、どのような時計が着けられていたのかを考えると、自ずとスーツに合う時計が見えてきます。
では懐中時計になるのか?といいますと、そういうわけではありません。(お好きな方でしたら懐中時計も素敵ですのでぜひ)
わたしは時計に限らず、身につけるものは懐古趣味になるギリギリのバランスで考えるようにしております。
スーツが最も栄えていた時代は、1930から40年ですが、その後もスーツの時代はしばらく続きました。
世界的に見ても、60年代頃までは、まだ男性はスーツという時代でしたが、70年代に入ると、アルマーニのようなデザイナーたちが現れ、メンズファッションという位置づけが確立されたことにより、スーツはものすごい勢いで衰退していきました。
そのように考えますと、1960年代頃までに着けられていた時計を考えてみると、本来のスーツに合う時計が見えてきます。
まず現代の時計とその当時の時計が全く異なるものは、時計のサイズです。現在の時計はケースの直径が40ミリを超えているものが数多く作られており、ドレスウォッチでさえも、39ミリという大きな時計が作られています。
ヴィンテージの時計に目を向けてみますと、戦前の時計は、30から33ミリの大きさが主流で、戦後も60年代ごろまでは、大きくとも36ミリ位までのケースがほとんどでした。
そしてケースの大きさだけではなく、時計自体の厚みも大きく変わっております。
昔は極力薄いものがドレスウォッチとして好まれていましたが、昨今は(ようやく少し落ち着きましたが)デカ厚時計と言われ、大きくて分厚い時計が良いという風潮がありました。
極端なものは落ち着きましたが、今でも40ミリ越えの時計をスーツに着けている方は多くいらっしゃいます。
私がこの項でお伝えしたいのは、ケースの大きさは36ミリ以下が理想であるということです。
そして、厚みもできれば薄い方が望ましいです。
そもそも、時計は薄くて小さい方が、技術としては作るのが非常に難しいです。
精密な機械を限られたケースの中に入れるということが、職人の技術の現れであったからです。
それがケースが大きくなれば、その分そこに頭を悩ませる必要がなくなりますので、職人の技術も昔ほど必要なくなってしまいます。
そのように、時代が進むにつれて、昔あった技術が失われていってしまっているということもあります。
なぜこのように薄くて小さい時計から、大きくて、デカくて厚い時計がもてはやされるようになったのかということですが、これは私の友人であり、時計の師匠でもある人が立てていた仮説が非常に納得のいくものでした。
昔のお金持ちは、良いものを持っているという事が、他人にわかってもらう必要がないという気概のある人たちだった。
だけど、昨今の新しい富裕層たちは、自分たちが良い服を着ている、良い時計を持っているということを、世にアピールしたいために、大きくて分厚い時計(わかりやすい時計)を着けたがる。
お金持ちの人たちの質が変わってきているというのです。
これは時計に限らず、洋服や車、形として見えるもの、全てに現れていることだと思います。
洋服も昔の上質なカシミヤは、あえて全く光沢感がなく、非常にマットな質感ですが、触ると隠せない高級感が出ているというものでした。
これは、光沢感で高級感を見せるということが、野暮であるという貴族的思想から来ているものでした。
それが昨今では、毛並みをあえて伸ばし、光沢感を強く出すことで、カシミヤですとわかりやすく伝えるようなものがもてはやされるようになったのです。
話がずれてしまいましたが、本当に上質なものは、わかりやすさと対極にあるものなのです。
本当に良いものを、あたかもそうではないように身に付けるということが、ダンディズムの世界です。
革ベルトとブレスはどちらがいいのか
続いては、時計を見る際に、革ベルトが良いのか、ブレスの時計がいいのかということについてお話しいたします。
これについては、理想を言えばどちらも持っている方が望ましいです。
何故かと言いますと、夏の暑い場に革ベルトは、とてもじゃないけど着けられないからです。

昨今では汗をかいても匂いがしにくい合成皮革の革ベルトが売られていますが、私としましては、やはり本革のものを使っていただきたいので、夏場に革ベルトはあまりお勧めできません。
また、イタリアやフランス人のように、シャツのカフスの上に時計をつけるという着こなしもありますが、あれをさりげなく身に付けることができる日本人はそうそういらっしゃらないと思います。
着こなしの1つとしてはあるのですが、あのような着こなしは、発明した人だからこそ、格好よく身に付けることができるものだと思っていただきたいです。
もし2本も用意ができないという方でしたら、革ベルトと、取り替えることができるブレスを持っておけば、6月から10月ごろまではブレスに変え、11月以降は革ベルトに変えるというようにすれば、1本の時計で、すべてのシーズン使うことができます。
ですが、時計は数年に1度オーバーホールをするものですので、やはり2本位は持っていたほうがよろしいと思います。
予算別のお勧め時計
この項目は私として非常に話しづらい内容であります。
ですが、何度も言いますが、あくまで私のお勧めですので、竹内はこのように考えているのかという程度にご一読いただけますと幸いです。
ちなみにお勧めするものの多くはヴィンテージです。
現行のものはわたしはさっぱりわかりませんので、その極端なススメを聞いてみようかという方のみ、お付き合いくださいませ。
予算〜30万
まず初めて、ヴィンテージウォッチを手にしてみたいという方で、このくらいの予算感で考えていらっしゃる方は多いと思います。私はこの価格帯でしたら、いつも2つの時計を勧めております。
①ヴィンテージのオメガ
②ヴィンテージのIWC(International Watch & coの表記の時代のもの)
大体年代は60年代前後ですが、この2つの時計は良い意味で昔から値段がそこまで上がらず、かつヴィンテージ特有の良い雰囲気を感じられますので、初めてのヴィンテージウォッチにちょうど良いです。
ですが、気をつけていただきたいのが、この年代の時計には、防水性能、堅牢性はありませんので、雨の日や、アウトドアの場面ではお使いにならないようにしていただきたいです。
予算〜100万
〜レベルソ〜
このくらいの価格帯のものは非常にたくさんあるので、一人ひとりの時計好きによって意見が全く分かれるところではありますが、私はこの予算でしたら、まず一つ目は、ジャガールクルトのレベルソをお勧めしたいです。
レベルソはポロ競技の際に、文字盤に傷がつくのを防ぐために、文字盤をひっくり返すというアイデアを考案したところから作られた時計です。
今の時代で言えば、
「ポロやる時ぐらい時計は取れよ。。」
と思うでしょうが、当時の貴族は美意識がとても高かったことが伺えます。
そのようなルーツからも、非常に気品を感じるデザインです。
新品では今は100万円を超えるようになってきていますので、中古市場で探されることも視野に入れてもよろしいと思います。
〜グランドセイコー〜
また、日本製のものが好きで、誰が見ても良い時計だと評価される一本が欲しいというお方には、グランドセイコーをお勧めしたいです。
この一本を持っておけば、どこに着けて行っても、嫌味がなく、良い趣味をしていると思われる時計です。
イメージといたしましては、会社の代表の方や、役員、重要なポジションの方などが着けておられるのがとてもしっくりきます。
〜バブルバック〜
最後の三つ目は、これはあくまでわたしの超個人的趣味なのですが、私はロレックスのバブルバックという時計が大好きです。
個体数が少ないため、あまり市場に出回る数も少ないのですが、現代のロレックスのイメージとは異なり、非常にクラシカルでサイズも小ぶりで、エレガンスを感じる時計です。
私がこの時計を初めて知ったのは、2022年に神戸の美術館で開催されていた白洲次郎と白洲晶子の展覧会に行った際に、白洲次郎氏が愛用していた時計が1本だけ展示されてあり、それがまさにバブルバックだったのです。(厳密に言うと、氏が持っていたものは、セミバブルバックという後年のものでした。)
それを見たとき、私の中でのロレックスの概念が変わりました。
「なんてクラシックな時計なんだ」
そこから私のバブルバック探しの旅が始まりました。

スポーティーなイメージのあるロレックスとは異なり、非常に渋さのある時計ですので、スーツスタイルに非常にマッチします。
サイズも小ぶりなものが多く、30~33ミリがほとんどです。
今の大きな時計ばかり見ているお方からすると、ボーイズのように見える大きさですが、一度着けてみると、時計ってこのくらいでいいよね。と納得のいく大きさです。
予算〜300万
さぁ、一気に価格が跳ね上がりました。ここまでくると、清水の舞台から飛び降りる覚悟で買う時計になってくると思います。
ここもたくさんの時計がありますが、私はたった一つ、このご予算を出すのでしたら、ヴィンテージのパテックフィリップをお勧めしたいです。

年々価格が上昇してきておりますので、いよいよこのくらいの予算でも厳しくなって来てはおりますが、まだまだ探すとあります。
ちなみに、ヴィンテージという定義は、30年以上前のものを指します。
対してアンティークは、100年前の物です。
私がお勧めしたいのは、80~90年代のパテックフィリップの、カラトラバです。
もちろん、50~60年代くらいの古い個体で雰囲気の良いモデルもありますので、そのあたりの年代で探してもよろしいと思います。
その年代のカラトラバは、大きさが33~35ミリがほとんどで、厚みも薄く、非常にエレガンスを感じます。
もちろん一本の買い物は高価ではありますが、その高揚感が半永久的に続くと思えば、私は決して高すぎる買い物ではもいと思います。
物の高い安いの定義ですが、その物が価格に対し、価値が上回っていれば、値段がいくらであろうと安いのです。
これは一般的な思考とは相反する、男の浪漫指数の計算方式ではありますが、理にかなっていると思います。
対して、支払う価格が安かろうと、価値がその価格よりも下回っていれば、それは高いのです。
そのような浪漫指数で計算をしますと、パテックフィリップのカラトラバは決して高いものではないのです。(熱くなるのでこれで終わりにします。)
そもそも、時計というもの自体、すでに男の浪漫以外の何者でもありませんので、コスパ、タイパなどという世界線ではない物事の捉え方をした先に、本当に良いものが見えてくると思います。
古い時計は本当に大丈夫?
「1940年、50年とか聞くけど、それって買ってすぐに壊れたりしないの?」
と思う方もいらっしゃると思います。
基本的に、数年に一度、オーバーホールに出しておけば、よほど乱暴な使い方をしない限りは壊れることはありません。
人の手で作ったものは、人の手を加えればしっかりと使い続けることができます。
これが私が機械式時計の好きなところです。
車もそうですが、コンピュータが入ってしまうと、コンピュータが壊れたらもう修復できないというケースが起こりますが、古い車はコンピュータがありませんので、部品さえあれば、修復して使い続けることができます。
もちろんそれに伴うコストはかかりますが、その分愛着も湧いていきます。
ですが、これは私がクラシックカーを買った時に、譲ってくださった方が話していたことですが、
「竹内さん、この車は、70歳のおじいちゃんだと思って優しく丁寧に乗ってあげてください」
ということ。ラフにガンガン気にせず使っていては、古いものはすぐに消耗してしまいます。
また別の方が教えてくださったことですが、
「イメージは、タバコの灰を落とさないように、ギアを変えるくらい、丁寧に乗ってください」
ということ。そのくらい、丁寧に扱うことができれば、古いものでも、長く使い続けることができます。
そんなの気にして扱っていられないよと思うかもしれませんが、その感覚に慣れていきますと、物の扱い方全てに気を張り巡らせることができます。
全てのものを丁寧に扱えるようになり、それが自分自身の身のこなし、所作へと関わっていくのです。
良いものを持つことで、自分が磨かれるというのは、そういうことです。
直して使って何十年が経ち、それを次の世代に受け継いでいく、と考えますと、最初に贖う出費は大きいかもしれませんが、長い人生ですから、良いものを身につける期間は長ければ長いほうがよろしいと思います。
2026年6月執筆
Atelier BERUN
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