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第13章 アクセサリー
ヴィンテージアイウェアの世界
この項はあまりにもディープで、The Book 2と銘打って別ページで書き連ねたいところですが、ぐっと堪えてこちらに書くことにいたしました。
古いものが好きな私ですので、気が付けば眼鏡もヴィンテージの世界にのめり込んでおりました。
わたしがなぜ古いものに惹かれるのかという理由ですが、シンプルに今の時代ではもう作ることができないものに魅力を感じるからです。
もしくはできたとしても、とてつもないコストがかかるというもの。
昔は当たり前だったものが、今は当たり前ではない。その時代のギャップに魅了されてしまうのです。
ヴィンテージの眼鏡は、US物もありますが、私が特に好きなのはフランス製のヴィンテージ。通称Frame Franceと呼ばれるものです。
ここでは全部ではありませんが、私の持っているメガネの一部を紹介していきがてら、代表的なモデルをお伝えしていこうを思っております。
メガネの始まりは、13世紀後半と言われており、役目は視力矯正器具でした。
18世紀ごろから、イギリスでテンプルが発明され、現代のような耳にかけるスタイルになりました。
現在、ヴィンテージアイウェアと言われるものは、USものですと、1900年頃から作られていたメタルフレームがあります。その時代は、9金や12金のような貴金属を使い、彫金の技術を駆使して、職人の手仕事によって作られたフレームが挙げられます。
そして時代が進み、1940年代前後からは、セルロイドという素材がメガネに使われるようになり、私が好きなフランス製のセルフフレームが世に多く作り出されるようになりました。
自分に合う眼鏡の見つけ方
まずここでは、自分の顔のサイズに合うメガネの正しい選び方について、書いていきたいと思います。
一番大切なポイントは、目と目の距離を図り、それに合う眼鏡を見つけるという事。
目と目の距離をPDと言いますが、そのPDはご自身で測る場合は、鏡の前に向かって、定規で黒目の中心と黒目の中心を測ればわかります。ですが、慣れないうちは、正確な数字を図るのも難しいです。
最近ではアプリで長さを測るものもありますので、そのようなものを使い測ってみるのもよろしいかと思います。
また、メガネ屋で視力検査をした際に、「PDいくつですか?」と聞けば、教えてくれると思います。
その数値がわかったら、次に見るべきポイントは、メガネのフレームの”ブリッジ幅”と、”レンズの横幅”を知ることです。
これについては、現行のメガネでしたら、テンプルの内側に数字が書いてありますので、そちらを見ればわかります。

こちらのメガネのように、[48◻︎20]と書いてありますが、この場合、48がレンズの横幅で、20がブリッジ幅ということになります。
これがフレームのPDで、FPDと呼びます。
人間の目と目の距離をPDと呼び、メガネのレンズの中心から中心の距離を、FPDと呼ぶのです。
現行のメガネでしたらこのように記載されているのですが、ヴィンテージのメガネは基本的に何も書いておりません。そのため、自分で測るか、お店の方に測ってもらう必要があります。
実際のフレームの上に定規を当てて測るのが1番わかる測り方です。

こちらがブリッジ幅で、

こちらがレンズの横幅です。
ここの測り方がわかれば、自分の顔に合うメガネが探しやすくなります。
現行とヴィンテージの違い
ここで、現行とヴィンテージのメガネの違いについてお話ししていきたいと思います。
これはあくまで私の感覚ですので、そういう違いがあるのか位の軽い気持ちでお付き合い下さいませ。
一つ目は、メガネ全体の大きさが違うということ。
どういうことかといいますと、現行のメガネは、より多くの方の顔に合うように、レンズが大きめに作られているものが多いです。
ブリッジ幅が狭く、レンズ幅を大きくすることによって、小顔の方でも、顔が大きい方でも、そのレンズの中に目が入れば良いというように、設計されている眼鏡が多いです。
先ほどのメガネも、ブリッジ幅が20に対し、レンズ幅が48でした。
このように、レンズ幅を大きめにすることによって、メガネの参入障壁を下げて、単なる視力矯正器具ではなく、ファッションアイテムに昇華させることができたのは、本当に素晴らしいことだと思います。
それに対し、ヴィンテージのメガネは、レンズがあまり大きいものがありません。
1960年代まで時が進みますと、ファッション性が出てくるため、徐々にレンズが大きいものも増えていきますが、それより以前のものは、レンズは小さいものが多かったのです。
それはなぜかと言いますと、昔はメガネのレンズはガラスが使われていたことが大きな理由です。
今でもそれを懐かしみ、レンズはガラスじゃないと雰囲気が出ない。という方もいらっしゃいます。
今の時代に多く使われるプラスチックと異なり、ガラスのレンズは重いのです。
そのため、レンズを大きくしすぎてしまうと、メガネ全体が重くなってしまい、掛け心地が悪くなってしまうのです。
それを避けるために、レンズの大きさは小さいものが作られていました。
そのような違いから、レンズの大きさが小さければ、ヴィンテージらしい雰囲気を楽しむことができるのです。
では、私のようにPDが71もある大きな顔の人は、レンズの小さなメガネをかけられないのか。と疑問や諦めが起きるかもしれませんが、ヴィンテージのメガネの中で、限りなく数は少ないのですが、ブリッジ幅が広く、レンズ幅が狭いというものがあります。
例えば、私が持っているもので、ブリッジ幅28cm、レンズ幅42cmというフレームもあります。
そのくらいかける人を選ぶようなフレームもありますが、自分の顔にぴったりはまるものに出会えれば、それは素晴らしく格好よく自身の顔を引き立ててくれます。
二つ目は、素材が違うということ。
現代のメガネのセルフレームはほとんどがアセテートという素材が使われていますが、ヴィンテージのセルフレームはセルロイドが使われていました。
アメリカのブランドでは、今でもセルロイドを使っているモデルもありますが、このアセテートかセルロイドかで、フレームの雰囲気はかなり変わります。
また、現在作られているセルロイドのフレームと、ヴィンテージのセルロイドのフレームは、同じ素材なはずなのですが、なぜか雰囲気が全く違います。
ヴィンテージのセルロイドは、鈍い光沢感があり、言葉には言い表せない何とも言えない魅力があります。
まぁこの素材に関して言いますと、本当に好きな人ではないと全く気にしないところではありますので、自分が納得できるかどうかという酔狂の世界であることに違いありません。
なぜセルロイドからアセテートに変わったのか、ということですが、セルロイドの主な成分はニトロセルロースというもので作られています。
これは火薬と同じ化学構造で、熱や摩擦などのわずかな刺激でも発火するリスクがありました。
実際、1950年代の後半から1960年代にかけて、ヨーロッパのセルロイド加工工場で爆発事故が多発しました。
それにより、ヨーロッパではセルロイドの利用が制限され、セルロイド製のフレームは徐々に衰退していったのです。
そのような特性から、セルロイド製の眼鏡を掛けている時は、ドライヤーは控える。また、直射日光が強く照りつける真夏日はなるべく避けた方がいいなどの気を付ける点はあります。
ここからは、私が持っているフレームをいくつかご紹介するのとともに、代表的なモデルを並べていきたいと思います。
パント(Panto)

ブリッジ部分のトップが角張っているデザインのことをパントと呼びます。
この名前の由来は、船底をひっくり返した形に似ていると言うことから、舟という意味を持つパントと名付けられたと言われています。
Pant
このメガネをかけていた有名人でいますと、坂本龍一さんが真っ先に思い浮かびます。
このセルフレーム全般に共通する良いことといたしましては、メガネがその人の顔を作ってくれるという事。
ただの視力矯正器具ではなく、着こなしの一部として、アイウェアを楽しんでいるというように見せてくれることができます。



クラウンパント(Crown Panto)


レンズのフレームのトップが角張っていて、冠をかぶっているように見えることから、クラウンパントと名付けられています。
一見クセがあるように見えるフレームですが、かけてみると、意外と顔なじみが良い形です。
このくらいボリュームがあるメガネをかけますと、メガネがその人の顔になると言う印象作りをすることができます。
顔が濃い、薄い、関係なく、顔にしっかりと合うものを選べれば、このようなフレームも違和感なく、どなたでもかけることができると思います。

パリジャン(Parisian)

ヴィンテージのFrame France(フレームフランス)が評価され始めたときに、1番最初に火がついたモデルがこちらです。
丸みを帯びた台形のようなレンズ形で、上品な顔立ちを作り出してくれます。
クラウンパントのような癖もそこまでなく、比較的どなたでも難なくかけられてしまうという懐の深さから、ヴィンテージのメガネで一足早く枯渇したモデルです。

ウェリントン(Wellington)




フレームの外側に向かって少し上向きに上がっていく形です。
前述したフレームと異なり、キリッとした顔付きの印象を作ってくれます。

フレームの細いものであれば、ビジネスでも使うことができます。であれば、ビジネスでも使うことができます。


ボリュームのあるウェリントンをかけている方で、有名な方で言いますと、イヴサンローランでしょう。
大振りなウェリントンタイプのアイウェアをとてもスマートに格好よく着けこなしています。
その他のモデル
代表的なモデルではありませんが、私が持っている中で、一癖あるヴィンテージのアイウェアをご紹介いたします。


ザ・ロック(The Rock)という名称が付けられているこちらのフレームは、アヴァンギャルドというシリーズの中の一つです。まさに顔を作るというような特徴的なフレーム。
40年代は、視覚矯正器具という位置付けで作られておりましたが、50年代に入ると、徐々にこのようなデザイン性が込められたフレームも出てくるようになってきました。

こちらはガーゴイル(Gargoyle)というモデルです。まるで仮面を着けたかのような特徴的なフレーム。
レンズに少し色を付けて攻めたアイウェアとして楽しむのがよろしいと思います。


こちらは、パリジャンでも、ウェリントンでもないけど、何かと聞かれたらウェリントンと答えるだろう。という絶妙なデザインです。

こちらも同様で、クラウンパントのデザインと、パリジャンのニュアンスが入り混じっている、とてもユニークなデザインです。


こちらは少し時代が進み、1960年代のAmor(アモール)のサーモント(ブロー)フレームです。
こちらのフレームは、目と眉毛が離れている人より、上のフレームと眉毛が一体になるように掛ける方が格好良く見えます。
1940年代と50年代の違い
1940年代以前の特徴的なデザインがあります。それは、テンプル部分に金属芯が入っていないフレームです。


50年代に入りますと、テンプルに芯が入るものが一般的になります。
この10年の間に何があったのかということですが、これは1940年代に行われた第二次世界大戦により、鉄などの物資を使うことが制限されたため、芯を入れることができなかったというのが説として言われております。
結果として、芯がないことによりセルロイドの美しさを際立たせることになったディテールなのです。

ちなみにこちらは私が持っている、1940年代の黒のフレームですが、黒なので芯が入っているかどうかは外からは判断できません。
ではどうやってわかるのか、ということですが、なんと、

こちらのテンプルの内部に鉄の芯が入っていないから、芯なしであるというのがわかるのです。
もうこれは完全に酔狂of酔狂です。(こういうのたまりません)
あとは40年代のセルロイドの方が剛性が高かったため、フレームのエッジが立っているというのも特徴的です。
角を触るとカリカリに立っているというのも、40年代ならではのフレームです。
メタルフレーム
ここからはメタルフレームについて書いていきたいと思います。
より古い歴史を持っているものとなりますと、メタルフレームです。
ただの真面目な人、という印象になりがちなメタルフレームですが、しっかりと自分自身に合うものを選べれば、顔立ちにプラスアルファすることもできます。

こちらは英国のHilton Classicというブランドのもの。
上から、
クアドラ(Quadra)=正方形の意味
ラウンド(Round)=真円
パント(Punt)
と呼ばれています。
一番多くの方に顔馴染みがいいのはパントですので、ぜひどこかで掛けてみることをお勧めいたします。

こちらの上2つは、セル巻きと呼ばれているもの。
貴金属のフレームの上に、さらに薄いシート状のセルロイドを巻いたもの。
2度手間をかけている、とても贅沢な作りです。
また、テンプルの形に目が入った方もいらっしゃると思いますが、下2つは縄手と呼ばれるもの。
指で引っ掛けて耳に掛けるタイプです。とてもクラシカルな印象が出ます。
一番下のメタルフレームは、メタルのパリジャンという珍しいモデル。
最後に、1920年代のUS製のメタルフレームをご紹介いたします。
当時のメガネはすでに前述いたしましたが、装飾品の位置付けで、ジュエリーと同じく宝石職人がメガネフレームを一本一本手作業で製作していました。
彫金も美しく、また、この時代でしか使われていなかった、ベークライトのノーズパッドがクラシカルなムードを感じさせてくれます。


まだ全てご紹介しきれておらず、語りきれてもおりませんが、このような世界もあるんだということを垣間見ていただけただけで幸いです。
2026年6月執筆
Atelier BERUN
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