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第4章 トラウザーズ
裾はダブルか,シングルか
裾の折返しは、正式には“ターンナップ・カフ”と言います。日本では昔から「カブラ」という名称でよばれてきました。
洋服が日本へ伝えられた頃、裾の折返しを見て、あれは何であるかと西洋人に聞いた際、「ターニップ」と言われたそうです。正しくは「ター(ン)ナップ」なのを、ターニップと聞き間違えてしまったのです。
そこでターニップの日本語の意味を調べた結果、「かぶら(蕪)」という意味であることが分かりました。以後、折返しのことを「カブラ」と呼ぶようになったと言われています。なんとも冗談のような、本当の話なのです。
裾の折り返し(ターンナップ)がついたのは1895年か1903年頃と言われており、誕生にはいくつか諸説があります。
<左がシングル / 右がダブル>
有名な話では、ある英国の貴族がニューヨークの結婚式に出席した際、雨が降っていたため、泥の跳ね返りを恐れてパンツの裾を折り返して歩いた。それを見たアメリカの人たちが、イギリスではああいう着こなし方があるのか、というところから流行したという話が有名です。
誕生した経緯がカジュアルダウンした場面のため、フォーマルウェアでは使用されないディテールです。モーニングやタキシードなどのフォーマルウェアは、当然シングル仕上げになります。
そしてこの裾口をターンナップに折り返すか、シングルで上げるかは、スーツを購う際、いつも悩むところではないでしょうか。ショップスタッフの方も、「ダブルにしますか?シングルにしますか?」と聞いてくることが多いと思います。
わたしの考え方ですが、フォーマルや礼服として着るなら「シングル」、それ以外の私的なトラウザーズの場合は「ダブル」で上げることをお勧めします。
理由を説明しますと、ダブルの裾が生まれる以前のスーツ生地は、とても肉厚で、トラウザーズの裾巾も今より広めでした。そのため、裾を折り返さなくとも足元にボリュームが十分にありました。しかし、昨今のスーツ生地は厚みが薄くなり、裾巾も細くなってきています。軽い生地に細い裾口のトラウザーズで、シングル仕上げにしてしまうと、足元にボリュームが無くなり、貧相に見えてしまいます。そうなることで、上半身だけ大きく見えてしまい、全体のバランスが悪くなってしまうのです。
<ダブル巾は4,0cm前後が美しい>
このダブル幅の長さは体格によって異なりますが、“3,5~4,5cm”がバランスのよい幅といわれています。小柄な方にはあまり巾の広い折り返しは似合いません。
裾口が広いトラウザーズには巾は少し狭め、細いものには少し広めに仕上げると、バランスがよく見えます。5cm以上巾のある折り返しもありますが、ファッション性が強くなるため、着こなせる人、おしゃれを楽しみたい人向きです。
<スナップボタン式はなるべく避ける>
スナップボタンでダブルの折り返しを留めている物がありますが、上から見ると金具が光って見えてしまうため、美しくありません。スナップではなく、糸で留めるタイプが断然スマートです。しかしこれは実用性を考えてしまうと難しいところです。BERUNでは糸留めにしてありますが、糸で留めてしまうと、折り返しの中に入ったゴミを取る作業が面倒になるという難点もあります。
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