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第11章 その他
スーツのポケットについて
ポケットに手を入れるのはマナー違反?
これからお話することは、英国でのお話です。他の欧州ではまた違った着方がありますが、英国には英国らしい独特の着崩し方があります。
今から挙げる3つの中で、英国では絶対にタブーと言われていることは何でしょうか。
1、上着の前ボタンを開けて着る
2、トラウザーズのポケットに手を入れる
3、袖のボタンを開けて着る
正解は2の、トラウザーズのポケットに手を入れる。です。
ですが、1と3も英国人は好まない着方なので、ぜひ覚えておいてください。
英国では、昔ながらの躾を重んじている学校や、パブリックスクールなどでは、ズボンのポケットを糸で縫い付けてしまうところもあるそうです。そのくらい、下品な行為だと思われていたのです。
では手の行き先はどこに行くのか。
彼らはトラウザーズのポケットに手を入れる代わり、上着のポケットに手を”突っ込みます”。
入れるというより、突っ込むというニュアンスが近いのです。
何気なく上着のポケットに手を入れて歩く。これが英国的な着崩し方のひとつです。
ですがそれでも、どうしてもポケットに手を入れてしまう!という方に、どういう風に入れればいいか、ということを(英国人にバレないようにこっそり)お話しします。
ランチタイムのときなど、オフィス街を歩くスーツ姿の男性を見ると、両手をポケットに入れて歩いている姿をよく見かけます。
この姿は決して美しくないですね。スーツを着ているビジネスマンが、何だか不良のように見えてしまいます。
両手をポケットに入れてしまいますと、肩が前に出てしまい、姿勢が崩れてしまいます。
ポケットに手を入れる場合は、ベント(背中のスリット)の切れ目からではなく、上着の前裾を後ろにもっていくように入れることをお勧めします。
これは元々、上着はモーニング・コートのように後ろが長かった時代からのことを重んじた発想です。
またこの入れ方をしますと、腕を前から後ろにもっていくため肩が自然と後ろにいきます。
姿勢も自然と上向きになるのです。ベント(背中の切れ目)から手を入れますと、上着がもたつき、変なシルエットになってしまいます。
サイドベンツは元々”剣吊り”と呼ばれ、剣を腰に差すときに邪魔にならないように生まれたデザインです。スリットに腕は通さないようにしましょう。
自分がどういう人になりたいのか。そこから考えると、洋服もどう着こなせばよいのか自ずと見えてくるでしょう。
スーツのフラップは入れる? 出す?
スーツの上着のフラップ(フタ)を出すべきか、しまうべきか、ということについて悩んでいらっしゃる方もいらっしゃると思います。
なぜ入れるか出すかという議論が繰り広げられているのかと言いますと、これはもともとフラップは雨蓋の役割をしており、中に雨が入らないためにフタがつけられた、ということが由来だからです。
そのため、「室内に入るときには中に入れて、外にいるときには出すべきだ!」という意見があるのです。
これに関して、わたし個人的な意見と致しましては、良くも悪くもどちらでもいいと思っています。
なぜかと言いますと、おしゃれな人は、そのフタがどうのこうのというのは気にもとめていないからです。
「よし、中に入ったから、フタを入れよう。。」
「よし、外に出たから、フタを出そう。。」
そう。この考え方がそもそもスマートではないのです。
もし、ポケットによく物を入れる方でしたら、フタはしまいっ放しの方がいいと思います。
なぜかと言いますと、出したり入れたりしている間に、フタがちょんっと猫の耳のように三角に出てしまい、そのままになってしまうことがたまにあるからです。それはとても格好わるいので、避けるべきです。(ポケットに物は入れないに越したことはないのですが)
ポケットに物を入れないのでしたら、フタは出しておいていいと思います。
これには補足がありまして、たとえばディナージャケット(タキシード)やそれに類するフォーマルな洋服には、そもそもフタが付いていないものがほとんどです。
それは、フォーマルウェアはそもそも室内でしか着ることがないから、という理由です。
昔の人たちは、建物と建物を馬車や車で移動していました。フォーマルウェアを着る場面は室内だけだったからです。
昔は一部の階級の高い人しか着ることがなかった服装が、市民権を得てわたしたち一般の人も着るようになりました。
その結果、当時の一部分だけを切り取るような着こなし方が、正しさとして浸透してしまっているのです。
本当に使う必要のない洋服には、そもそも付いていないのです。
このことからもお分かりいただけるかと思いますが、もしフタが付いているのであれば、基本は出すということで良いと思います。
ここでの章で一番お伝えしたいことは、出したり入れたりするという行為が、最も野暮だということです。
そのような細かなことに捉われない、もっと広い世界を見て装いを楽しむということが、なによりも大切なことだと私は思います。
最終編集 2023年4月
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