本切羽(本開き)

「本切羽」は「ほんせっぱ」と言います。別の呼び名では「ほんあき」と読み、「ほんびらき」とは読みません。袖のボタンを開閉できるデザインで、「切羽を切る」という言い方が、正しいです。

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<本切羽(本開き)>

切羽とは刀の鍔(つば)の、柄と鞘(さや)にあたる部分につけられた薄い楕円形の金具の部分をさします。「切羽詰まる」という言葉もここから生まれていると言われています。

こちらは元々高級な仕立てとして使われていましたが、現代ではあまり珍しいディテールではなくなりました。仕事中に腕をまくらなければいけない業種(医者など)のために生まれたディテールとも言われており、英語では「ドクターカフ」という呼び名もあります。

そもそも袖口にボタンが付きはじめたのは、海軍の兵士達が袖で鼻水をふくのをやめさせたかったナポレオンが、制服の袖口にボタンを付けさせたことがはじまりと言われています。その後、軍服が市民服となり、様々な仕事に便利なよう袖口が開閉できる今の位置へと変っていきました。

袖口のボタン数は3~4個がベーシックで、5つ以上はよりデザイン性を追求したデザイナーズスーツなどに用いられます。2つボタンは“アイビールック”の「ブレイザー」や、アメリカントラッドのスーツなどに見られるディテールです。
現代では既製服でも本開きの仕様にするために、袖丈を調整した後に開けられるよう、吊るしのときはあらかじめボタンがついていない物が普及しています。

これもお国柄で面白い話があるのですが、イギリスは本開きできる仕様であってもわざわざ開けるようなことはしません。それは、わざとらしいおしゃれを好まない国民性だからでしょう。
それに反し、フランスやイタリアは袖のボタンを1つか2つ外します。これは「せっかく開けられるのだから、開けたほうが素敵でしょ」という考え方の違いです。どちらが良いわるいではありませんが、閉じているほうが慎ましく、開けているほうが華やかな印象を与えます。

せっぱ

余談ではありますが、ヨーロッパの人たちはスーツや洋服を父から子へ受け継いでいく文化があります。ヨーロッパでぼろぼろのスーツを着たアジのある老紳士をたまに見かけるのはそれが所以です。そこでスーツを仕立てる際、袖釦の一番奥のボタンだけを、わざと本開きにせず飾り穴にします。そうすることで、もし息子が父親よりも大きく成長したときも、袖口を出して奥の飾り穴の糸をほどき、一番手前に新しいボタンホールをつけることで、バランスよく仕立て直すことができるからです。
質実剛健なクラシックスーツを仕立てた際は、ぜひ話題作りにでも試してみるのも面白いのではないでしょうか。

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