【山本理輝様】周りから信頼してもらい、職業や街を感化する。
山本理輝様 銀座紺碧法律事務所 代表 辯護士
ファッションはライフスタイル
竹内:最初に会ったのは4年前でしたね。よく覚えています。有楽町の駅前の喫茶店でした。
山本(敬称略):そうでした、僕も覚えています。あのときは何でもないパンツにシャツ一枚で、ポケットにペンを入れてました。
竹内: そうですね。そのときは、「これは手の施しがいがあるな」と思いましたよ。あの日、興味を持っていただいて、1着目を作り、そこから続けて作っていただきましたね。私としてはそれがとてもありがたかったです。見事に装うことをライフスタイルに落としこんでくれましたね。
山本:1着目は確かに特別なものでした。でも着ているうちにライフスタイルに取り入れたいと思って、2着目、3着目を作りました。スリーピースだけでなく、ジャケパンも揃えて、カジュアルなコーディネートも増えていきました。
竹内:たまに着るのではなく、毎日着ることがブランディングにもなります。このご時世、なかなかいないですよね。だから、人間性も引き立っていきます。
山本:立ち振舞いや所作は変わりましたね。例えば、立つ、座るにも約束事があるじゃないですか。座るときはボタンを外す、スラックスをつまんで少し上げるとか。一連のルーティンがあって、それをこなしていくのが、心配りになって着こなしに表れていくんだということを感じました。こなれてくると自然になじんでいきますね。
竹内:美は細部に宿るというように、細かな部分にその人の人間性が出てきますよね。
山本:間違いなく出ると思います。ものを大切にする、細かいところに意識がいく。それは仕事での評価にも繋がっていきます。あとは、どこに連れて行っても恥ずかしくないと言われます。しっかりとしたシーンでも恥ずかしくない、紹介しやすいと言ってくれるのが嬉しいですよね。
僕一人では達成できなかった、BERUNがいたからこそできたと、自信を持って言えます。
ファッションは引き算
山本:シーンに合わせて服を選べるようになったのは大きいです。カジュアルの場合でも、服に迷わない。完成形の手堅いところから、どう引いていくかという発想を教えてもらいました。
竹内:今のご時世、カジュアル化しているので、足していきたくなるんですが、私は、ファッションは引き算だと思っています。まずはスリーピースというフォーマルな装いがある。これをホームパーティーに着ていったら、仕事帰りですかってなってしまいます。
では、それをカジュアルダウンするためにどうするか。まずはベストを脱いでツーピースにしてみる。その次はジャケパンにしてみる、と、少しずつカジュアルスタイルに引いていきます。引きすぎてしまうとバランスが崩れてしまうので、はじめの内は徐々に考えて引いていきます。
足し算の発想をすると、例えば短パンTシャツにジャケットを着てしまったり、とちぐはぐな組み合わせになってしまうことがあります。
そのおかしさに気づくのは引き算の発想があるからで、わからないとやってしまうと思うんです。
山本:スリーピースという完成形から、どのアイテムをどう減らしていくかという発想はすごく理解ができました。
フォーマルなものがあって、少しずつ引いてカジュアルにしていくという発想は、いろいろなことに応用がききますね。非常に勉強になりました。
Bespoke(あつらえる)ということ
竹内:私の仕事はオーダーを受けてからが大変です。よろしくって言われてから考えますから。
ですが、例えばこういう風にお願いしますと言われてその通りに作ったら、それは誰でもできる仕事じゃないですか。「よろしく」って言われてから頭を悩ませる、それが私の仕事の面白さです。
「前と同じでいいよ」と言われているのに、気づかないレベルでちょっと変えたりします。
山本:確かに、「今回少し微調整しておきました」ってことありますね。
竹内:その人の変化に合わせて変化させていきます。前はこれだったけど今はこれがいい、ということがあります。そしてその変化がBespokeの楽しさです。
洋服を着たその人が劇的に変わるということではなく、その人らしさが表現されていく、確立されていく、自然体になっていくというイメージです。
山本:日本のオーダーメイドとイギリスのBespokeは大きく違いますね。二人で話し合って作っていくのが魅力です。
竹内:オーダーメイドは、お客さんがオーダーをしてそれを作りますが、私の場合はあまりお客さんに生地を見せすぎないというのもありますね。
山本:確かに、最初はまったく選ぶ権利なかったですね。
私はそれでいいと思います。逆に、細かく選べますというのを売りにしている店もありますが、何を選べばいいのかわからない。もし自分が選んだら、言ったことに責任を持たなくてはならない。
それって満足につながるかと言ったら、そうではないと思います。
消費者として、ものをみたら良いか悪いかはわかるけど、何ミリが良いとか、ボタンとか裏地とか、そういう細かなディテールまではわかりません。
そこを大途さんに細かく教えてもらって、生地はこの中からが良いですよって枠をもらって選べるというのがありがたい。まさにBespokeだと思います。
銀座を代表する弁護士を目指して
山本:大途さんはある意味、古典的なものを作っていて、私より若いというのが魅力です。
私の仕事柄、古典的でベーシックに行きたいと思っているけれど、凝り固まりたくはないので。
私は今、31歳(2018年取材当時)とまだまだ若いですが、しっかり古き良いものを知りながら、日々進化していくような生き方をしたい。私自身も大途さんも、変わりながら良いものを共有し合って成長していきたい。BERUNの大途さんはそんな存在です。
あと大途さんは、突き抜けていますね、服について。
どの業界でも、一人で身を立てて行くとなると、やっぱり突き抜けていないとダメだと思います。
中途半端ではダメなので、良い突き抜け方をされていて、非常に影響を受けています。
竹内:理輝さんはこの4年の間で既に、前とはまったく違うことが起きているので、この先どうなるんだろう、という楽しみがあります。ぜひこのまま、理輝さんらしさを貫いていってほしい。4年前に会ったときは独立するとは思っていませんでした。銀座を代表する弁護士になって、銀座の街の格を挙げてほしいです。
観光客がピシッとスリーピース着ている人を見かけて、「さすが銀座だね」とそんな風に思ってもらいたい。
山本:弁護士業界って確かにお洒落な人が少ない。お金持っているし、スーツを着る仕事なのに、興味がない、意識が低い。とても残念ですが、まずは私が軸を立てて、風格があるから一つ一つの言葉に重みがある、そんな風になっていきたいです。
竹内:理輝さんのような人が前に出ていくによって、若い人が「山本先生みたいになりたい」となって、弁護士がとてもお洒落になる、そんなときが来ると素晴らしいですね!