【石井様】川上を知り、自分のスタイルを確立する
石井様 川上を知り、自分のスタイルを確立する
WEBサイトから伝わってくる情熱
石井(敬称略):もともと洋服は好きで、どこで洋服を仕立てようかな、とWEBで検索をしていたところ、BERUNにたどりつきました。洋服屋さん、仕立屋さんは世の中にたくさんあります。その中で、イタリア、イギリス、アメリカと分かれていますが、伝統を重んじていて長く使える、そして質もいい、さらに背景が伝わってくる作り方をしている、そんなことがBERUNのサイトから伝わってきて、ここにしようと思いました。
何より、店主の竹内さんが、歴史や文化なども熱心に伝えようとしていることが伝わってきたので、いろいろ教えて欲しいなと思いました。
竹内:僕のブログは、いつもみんなに熱いと言われます。割と淡々と書いているつもりなんですけど、相当な熱量らしいですね。
石井:ブログだけでなく、購入者に冊子として提供する予定だったというHPのページ『The Book』で、どのように手入れをしてほしいや、どんな着方をしてほしいと提案されています。売って終わりじゃないという思い、お客さまと長く付き合っていこうということが伝わってきました。僕は洋服が大好きなので、あれを読んでノートにまとめたりしていました。
竹内:そういう風に言ってもらえるととても嬉しいです。
石井:服に特別悩みがあったわけではないですが、自分の中でどうしたらいいかもわかりませんでした。
ただ、洋服が好きであるほど、トレンドを意識して流されてしまいがち。表面ばかり見てしまい、それを取り入れていた結果、よくわからないものができあがっていたということが起こると思いました。そこを竹内さんに作ってもらうことで、すごく客観的に、こういったものがいいよ、こういう作り方、着方をしてと、提案してもらえるので、まとまったものになっていると思ったんです。
WEBから出てきた「本物の竹内大途」
石井:この店を訪ねる前からずっとブログを読んでいたから、自分の中で竹内さん像ができていました。だから、初めて店を訪ねてお会いしたときは「本物だ!」と思いましたよ。
竹内:そうか、ブログを読んでくれていましたね。細々と書き続けているブログですが、意外に知らない方も読んでいただいていたり、書き続けていてよかったと思う時があります。わたしの言葉を聞いてくれている人がいるのがとても嬉しいです。
最初は着られるくらいが良い
石井:以前ジャズライブに一緒に行ったとき、納品に合わせて、最初に作ったスーツをわざわざ持ってきてくれましたよね。
「完成しましたよ、こんな場所で納品するなんて記念になりますね」って。
笑いながらバックヤードで着替えて、最前列の真ん中でライブを聴いていました。新しい服に身を包んで、新しい世界に一歩踏み込んだような、そしてそれを歓迎してもらっているようで、あの瞬間は一生忘れないと思います。
竹内:最初は、鏡見たくないって言っていましたよね。
石井:いや、恥ずかしくて。着慣れていないし、着られてる感がすごかったんです。小学1年生がランドセルを背負ったような。
竹内:僕はそれで良いと思っています。洋服はそもそも自分なりに着こなしていくものです。新品の洋服を良しとしない、着古して味が出てきて、初めて自分のものになる。2、3年後に、ようやく慣れてきたくらいがいいんです。
石井:僕、早く慣れたくて。最初の頃は会社には着ていかずに、家に帰ったらスーツに着替えて、街をブラブラしていました。ほぼ毎日着ていたから、やっと目が慣れてきました。
竹内:素晴らしいですね。
タキシードなど普段着ないものを作った時は、お客様に「毎日着てください」と言うんですよ。フィッティングして、次に着るのが結婚式だったら自分のものじゃないんです。なので、毎日そうやって着てくれていることはとても嬉しいですね。
石井:このスーツはまだまだ自分にとって特別な存在。一張羅ですから。
これから数も増えるだろうし、もう少し日常の、今後一緒に人生を歩んでいく相棒のようになってくれたらと思っています。
自分なりのスタイル、着こなしを
竹内:もともと石井さんはアメリカントラッドで、ブルックスブラザーズなどを着ていましたね。パンツの丈が短かく細身のコンパクトなスタイル。だから、このスーツ作った時はいい意味で違和感があったのではないですか?
アメリカントラッドはアメリカントラッドなりの良さがあるので、そのスタイルが好きなのは、そのままでいてほしいんです。その中にスリーピースの着こなしとか、本当に正しい川上の装いをするときはブリティッシュトラッドという世界もあるという感じです。完全にこっちに行ききらなくてもいいし、アメリカントラッドも大切にしてほしいと思っています。
どっちも知ってほしい。私もアメリカの文化は大好きですし、イタリアのファッションも好きです。でもやっぱり川上はイギリスなので、原点回帰すると英国は良いなと常々感じています。
石井:両立できるんだ、と最近思いました。映画の中で、アメリカ人のカルチャーだと思っていたものをフランスのオリンピックで着ているシーンを観て、「あ、これなんだ」って。
竹内:そう、スリーピースにボタンのあるシャツを合わせるのは日本ではNGとされていますが、アメリカだったらOKだったり、いろんな国の文化を知っているからこそ、自分なりにどんどん落とし込んでいくことができると思うし、それが石井さんの味になってくると思います。
全部任せるというお客さんもいる中で、石井さんはもともとスタンスを持っているからこそ、自分の提案から、こういうふうに着てみました、合わせてみましたと、自分なりの着こなしをどんどん作っていってほしいですね。