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第12章 お手入れ
なるべくクリーニングには出さないほうがいい
定期的にクリーニングに出す必要はない
お客様とお話をしていますと、スーツを定期的にクリーニングに出されている方がいらっしゃいます。わたしはこの仕事をはじめてから、自分のスーツをクリーニングに出したことは数えられる程度です。
お店の技術によりますが、洋服はクリーニングに出すと着実に疲弊していくものとお考えください。
そのため、できるかぎりクリーニングには出さず、日々のこまめなメンテナンスだけできれいな状態を保ち続けるように心がけましょう。
クリーニングの実情
一般的なクリーニング店は、「ドライクリーニング」で洗っています。このドライクリーニングには、「石油性溶剤」というものが使われています。この溶剤で洗うことにより、動物の毛で作られているウールの大切な油分を落としてしまうのです。その油分が、ウール特有のツヤや、雨を弾く役目を担っています。
良質なスーツでは、内側に使われる芯地も動物の毛から作られているものを使用しているため、クリーニングに出し続けることで油分が抜けてしまい、生地の風合いやツヤが失っていってしまいます。
そしてこのドライクリーニングは、「油溶性」の汚れしか”完全に”取ることができません。取れない主な「水溶性」の汚れとしましては、「コーヒー・しょうゆ・ソース・ジュース・汗…」などがあげられます。クリーニングに出しても汚れが満足に取れない理由はこういったところにあるのです。
汚れが取れないまま高熱でプレスされることで、汚れが生地に固着してしまいます。
一番わかりやすいのは、シャツの襟元とカフスではないでしょうか。期待しているほど、真っ白になって戻ってこなかったと思ったことはあると思います。
安価なクリーニング店では、プレスの仕方も手荒なところが多く、シャツやジャケットに使われる繊細な貝ボタンは、割られてしまうこともしばしばあります。ほとんど割れることのない丈夫な水牛ボタンでさえも、割られてしまったという話を聞いたことがあります。
また、クリーニング店のアイロン技術やアイロンの仕方によって、スーツのラペルのロール位置が変わってしまったり、着心地が変わってしまうことがあります。
多くのクリーニング屋がなぜ水洗いではなく、ドライクリーニングがほとんどなのかといいますと、水洗いでは生地の特性で伸縮が起きてしまい、サイズやシルエットが変わってしまうため、クレームの元となるからです。そういったことがドライクリーニングの場合は起こりづらいのです。数多くのクレームを避けるために、便利なドライクリーニングが使われているわけです。
しかし、全く出さないというのもおすすめできません。週に2,3回デイリーに着ているようなスーツをクリーニングに出さずにいると、汗やシミで生地が痛んでしまいます。
夏場に多く着用をした場合は、臭いやシミが気になるため、数ヶ月に一度は出した方がいいでしょう。(汗をたくさんかく方は2,3ヶ月に一度でもいいでしょう)
ですが、春秋冬はそこまで汗をかくこともないので、こまめにクリーニングに出す必要はありません。
あまりデメリットばかりを言いすぎても業界から冷たい目で見られてしまいます。。すべていけないわけではなく、”どの店に出すか”がとても大切です。真剣に汚れと向き合っているこだわりのお店も、都内にはいくつかあります。
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