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第3章 ジャケット
着丈の理想的な長さ
着丈の長さは、ラペルの幅と同様に、時代によって変動していきます。
わたしはスリーピース・スーツなら、しっかりとお尻が隠れるまでの着丈を作ります。
ツーピース・スーツ、またはジャケパンスタイルの場合は、それより1~2cmほど、短めにお作りすることもあります。それ以上短くすることは、わたしはあまりお勧めしません。
昔からバランスのいい着丈の長さというのは決まっています。それは、総丈(首の付け根から踵までの長さ)÷2という長さです。
他にも「親指の先端までの長さ」、「中指の第二間接までの長さ」ということもありますが、この3つの測り方に全て共通しているのは、お尻がしっかりと隠れているということです。
現代の男性の上着丈は短く、お尻の真ん中程度までしか隠れていない物が数多くあります。
一度ぜひ、シャツの襟の下から、床までの長さを測ってみてください。ほとんどの方が、140~152cmくらいかと思います。
例えば146cmだったとしましょう。半分で割ると、73cmになります。
ご自身のお持ちのジャケットの着丈は、果たして半分に近い数字になっているでしょうか。おそらく、3〜5cm前後短いものが多いのではないでしょうか。
150÷2=75cmの方でしたら、既製服で売られているものは、70〜72cmほどではないかと思います。
それでは、理想的な着丈の長さより短いのです。
では、あらゆる体型の方がこの計算に当てはまるのかと言いますと、体格によって、ある程度バランスを見る必要はあります。
たとえば背の低い、または肥満型の人にすっぽりお尻が隠れるくらいまで着丈を長くしてしまうと、上半身が長く見え、スタイルがわるく見えてしまいます。
反対に、細身の背の高い方が、着丈の短い上着を着ていると、とても貧相に見えてしまいます。
このように、一概に方程式だけで割り出すことができない人もいます。
<お尻がしっかりと隠れているのが理想>
なぜ短い着丈がいけないかと言いますと、ジャケットの理想的なシルエットは砂時計型だからです。
肩からウエストにかけてゆっくりと絞られていき、そこから裾に向かってゆっくりと広がっていきます。
着丈が短くなってしまうと、その裾に向かって広がっていき、最後に内側に巻き込むように入っていく砂時計型のラインが出ず、外に向かって跳ね上がったまま着丈が終わってしまうのです。
これは言葉ではなかなか難しいので、この文章をご覧になっていただいた後、世の中のスーツを着ている方達の姿を見てみていただけたらなんとなく分かっていただけると思います。
このように考えると、ただ単に着丈は長い方がいい、短い方がいいという、一辺倒な考え方ではないことがわかっていただけると思います。
ただ、着丈がお尻が隠れる長さにするというのは、全体的なバランスを見て、ジャケットのシルエットを美しく出すためにもとても必要な考え方なのです。
余談ですが、昔の男性のフォーマル服は、「モーニング・コート」や「イヴニング・コート(燕尾服)」のように、前が短く後ろが長い服が一般的でした。これは、”男にはお尻などないように見せる”という、おしゃれの究極の美意識が詰まっています。つまり、男性がお尻の輪郭を見せるなんということは、愚の骨頂であるという発想だったのです。
肌も同様に、スーツには膝下まで隠れる「ホーズ(膝までの長い靴下)」を履き、座ったときに裾が上がり、すね毛が見えるなどという姿は絶対にタブーでした。
洒落者であり続けるためには、トレンドを横目で流し、その上で自分のスタイルを貫き、日々構築し続けることが大切です。
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