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第3章 ジャケット
前ボタンの数はいくつか
現代のスーツの前ボタンは、2つか3つの物が主流になっています。前ボタンの数は、少ないほどモダンで、多ければクラシックだと言われています。そういった理由から、クラシックなスリーピース・スーツに合うのは3つボタンです。
19世紀末のスーツの前ボタンは、4つや5つの物もありました。それが3つボタンになり、その後、2つボタンが流行したのが1930年頃です。現在、「フラワーホール」とよばれているラペルに付いているボタン穴は、元々、第一ボタンまで留めていた軍服の名残です。
<フラワーホール>
モダンな着こなしには、2つボタンのほうが合わせやすいです。普段あまり気にすることはないかと思いますが、この前ボタンの数の違いだけで、見た目の印象はかなり変わってしまいます。
<2つ釦(上1つ掛け)>
たとえば、上背が低く、恰幅のいい方が、Vゾーンの狭い(高い)3つボタンの上着(下写真)を着ていると、シャツの見える面積が少ないため、寸詰まりに見えてしまい不格好に見えることがあります。そういった体格の方は、2つボタンでVゾーンを広く見せることで、違和感をなくすことができます。
元々2つボタンは、多くの人の体系をカバーできることから一般化していきました。
3つボタンの真ん中のボタンを1つ掛けるスタイルは、上背のある細身の方が着るととても綺麗に見えます。
<3つ釦(真ん中1つ掛)>
各国の特徴を簡単にならべると、イギリスでは3つボタンの真ん中1つ掛け(段返り)、イタリアは2つボタンの1つ掛け、アメリカは3つボタンの上2つ掛け、または2つボタンの1つ掛け、が多く見られます。(ここ数年でその国毎の差もなくなってきてはいます)
アメリカとイギリスでは、Vゾーンの考え方が少し異なります。アメリカ人はVゾーンが深くなる(下がる)ことに対して抵抗はありませんでしたが、イギリス人はあまり胸元を見せることをよしとしませんでした。これはシャツを下着と捉えるかどうかの問題であり、下着であるからなるべく見せないほうがいい、と考えたのがイギリス人でした。そういった背景から、英国のウエストコート(ベスト)は、Vゾーンの位置が高く作られているのです。
タキシードの場合は1つボタンが用いられますが、一説によるとタキシードの1つボタンが主流になるのは、1898年以降のことだと言われております。タキシードのはじまりは元々くつろぎ服から派生しているため、胸元をきっちりと締めておく必要がなかったからです。Vゾーンは狭くなるほどクラシック、開くほどモダン、と覚えておいてください。
最後に余談ですが、前ボタンの一番下を開けるようになったのは、1935年頃から定着したと言われており、それより以前は3つボタンすべて留めていました。
1930年代よりも前の話を題材にした映画を観てみると、忠実に再現している映画はここもしっかりとボタンを留めています。時代背景によって、着方も変わってきているのです。
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