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第12章 お手入れ
靴磨きを愉しむコツ
靴磨きは一度ハマるととても面白いです。無心に靴を磨き、光っていくさまを見て悦に入る。凝り性の男性なら誰しも惹かれるでしょう。
靴磨きを楽しくやるコツですが、”いい靴を磨く”ことです。なんだそれ、と思われるかもしれませんが、これが最も靴磨きの楽しさを実感できる方法だと思います。
たとえば、下駄箱にある靴のほとんどが1万円ほどの靴だったとしましょう。1万円ほどの靴は革の品質も上等ではなく、作りも本格的ではありません。その価格帯の品質であれば、どんなにいいクリームやブラシを使っても、効果には限界があります。はじめは、磨いていく毎にじんわりと光っていくさまを感じてほしいのです。
ひとつめの境としては、3万円を超えた辺りから靴のつくりが変わってきます。次は7万円、10万円としましょう。特に靴は、価格に見合ったクオリティがしっかりと線引きされています。
オールデンのホーウィン社のコードヴァン(馬の尻の革)は、極端な言い方をすれば、誰が磨いてもピカピカになります。あまりにもきれいになるので、自分の靴磨きのセンスを感じてしまうでしょう。イギリス靴であればジョンロブ、エドワードグリーンなど、既成靴で10万円を超える靴は、革の品質が別格になります。
おろしたてのときは、なるべく高い頻度で靴磨きをしてください。革には表面から”床(とこ)面”まで厚みがあり、何度もしっかりとクリームを入れていくことで、床面まで浸透していきます。そこまでいくと、後は軽くブラッシングをするだけで内側からじんわり光ってくるようになるのです。
靴の修理は意外と高いものです。オールソール(底を剥がし、新しい底を付ける修理)をすれば12000円はかかります。そういった修理をしてまでも履き続けたい靴であるのか、悩むことと思います。おそらく購入金額よりも高い修理代を請求されたら、よほどのものでないとあきらめてしまうでしょう。”生きたクローゼット”を作っていくためには、安物に手を出し、消費のサイクルに巻き込まれていてはいけません。
後は、靴磨きの道具をそろえることもオススメします。クリームやブラシは当然ながら、道具を入れるボックスなど、エプロンなんかも自分で好きなものを選ぶのがいいと思います。わたしはイギリスの蚤の市で見つけた古い小さなグローブトロッターの中に道具をしまっており、エプロンはヴィンテージショップで購入したインディゴのものを気に入って使っています。そのときだけ、靴磨き職人になった気持ちになれます。このように、愉しんで靴磨きをしていれば、雑音が聞こえなくなり、無心になります。
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