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終わりに
終わりに
最後までこの文章を読んでいただきありがとうございます。
この内容をHPにアップしようとしたきっかけは、わたしのブログ、「伊達男日和」の〜共創時代〜に書いております。
わたしは高校生まで青森で育ち、東京にファッションスタイリストを目指して上京してきました。その後、様々な出会いを通じ、約2年に亘りスタイリストのアシスタントをやっていました。
スタイリストという仕事は、数ある既製服からテーマに合った物を探し出し、それを組み合わせてひとつの作品にするという仕事です。とても厳しい現場でしたが、とても楽しく働かせてもらい、様々な経験をさせてもらいました。
ある日、スタイリストの道だけでは将来不安を感じはじめたことを機に、色々なビジネスの勉強をしはじめた時期がありました。
そんなとき、「誰かと会って話すときは、私服ではなくスーツを着るべきだ」と、目上の方から言われた言葉を信じることにしたのです。
その当時わたしは、スーツが本当に大嫌いで、「生涯で二度とスーツなど着ない。結婚式にも葬式にもデニムを履いていく」と言っていたほどでした。
会社に向かう黒ずくめのサラリーマン大行進がわるいイメージとして焼き付いていたのです。
そんなわたしは嫌々、当時1着だけ持っていた安物のスーツに身を包み、ぼろぼろの合皮の靴を履き、量販店で売っている2000円のネクタイを着けて人に会っていました。
そんなある日、社員数百人を抱える会社の社長と面会する機会を得ることができ、気合いを入れてそのお方に会いにいきました。約15分、自分の想いを伝え終わった後にその方は口を開きました。今でも、鮮明に覚えています。
「わたしはきみがこの部屋に入って来たときから、君の話を聞こうかどうか決めていたよ。わたしは毎日、何十人何百人の人と会うから、その人がどういう人なのかを短い時間で判断する必要がある。そのときに、必ずこの3つを見ることにしている。
1つ目はその人の目。その人がどれだけ今の仕事を真剣に取り組んでいるかは目を見ればわかる。目が死んでいる人が、面白い話をできるとは到底思えない。
2つ目は服装。ビジネスの場でいえばスーツ。スーツは自分をよりよく見せるという力もあるが、その他に、人と会うときに汚い格好をしていたら相手に失礼だから、しっかりとしたスーツを着よう、という相手への配慮があらわれる。スーツが適当な人は他人への配慮も足りないし、外見がどれだけ大切なのかもわかっていない。
最後は靴。足先の靴まで綺麗に履いている人は視野が広く、自分だけでなく周りもしっかりと見られる人だ。
残念だがきみはすべて不合格だ。目は自分の事しか考えていない目をしているし、スーツのサイズも合っていないし何より格好わるい。靴も汚い。わたしとちゃんと話をしたければ、オーダースーツの一着や二着でも作ってきたらどうだ」
そうはき捨てられ、オフィスを追い出されるように飛び出して来ました。わたしは心底悔しくなり、その後すぐに近くにあった百貨店に行き、スーツ、ネクタイ、シャツ、靴、鞄、ベルトを一式で揃えました。すべて合わせて約25万円。リボ払いで購入しました。
スタイリストのアシスタントをやっていた当時は月収3万円程度しかもらっていなかったので、当時の自分には本当に辛かったですが、これで人生を変えてやる、という強い思いがありました。
完成を約1ヶ月待ち、高鳴る気持ちを抑えて試着をしました。その日、人生で生まれてはじめてオーダーメイドを身につけましたが、あまりの感動に全身の震えを抑えることができませんでした。
この変わった自分を見てもらいたい。ダメ元で、もう一度そのお方に会えないかと連絡をしました。するとその方は、10分なら時間を作れるとお時間をいただいたので、変わった姿を見てもらいに会いに行ったのです。すると、なんと会った瞬間何もいわずにハグをされ、こういわれました。
「お前はおれのいうことを信じて変わってくれた。この行動は絶対に間違いじゃない。事実お前は1ヶ月前より目が変わった。今度から誰かに会うときは、必ずこの服を着て会いにいくんだ。周りの目が今までのお前の印象から全く変わるのを肌で感じるんだ」
その後 言われた通り、人に会いに行くときは必ずその格好で会い行くようにしました。事実、その後から会う人の印象は全く変わりました。ファッションに力があるのは知っていましたが、ビジネスウェアでもここまで違うと感じたのは、そのときが初めてだったのです。
自らが装いを新たにしたその日から街の景色が変わりました。
何より気になったのが、スーツを着ていて格好いいと立ち止まるような人をまったく見かけないのです。
なぜ、こんなにも自分を指し示す大切なものなのに、誰もがないがしろにしているのだろうか。
そう思った日から、スタイリストの仕事に力が入らなくなってしまったのです。
スタイリストは人気商売で、いくらでも替えがききます。わたしが辞めても、翌日にはわたしの仕事をやりたいと挙手する人がたくさんいる。
しかし、何よりも大切なビジネスウェアを提案する人が、なぜこうも少ないのだろう。
せめてわたしの周りの人たちだけでも、この本質的なスーツの奥深さに気付いて欲しいという願いを込め、独立する道を選びました。
正直 最初はフォーマルのことなんてまったくわかりませんでした。そのため、誰よりもお金と時間をつぎ込み、勉強したのです。
わたしの願いは、日本にもっともっと格好いい男性たちが増え、海外から来た人たちに、「日本にはこんなに格好いい男たちがいるのか」と感心してほしい。
そして何より、おしゃれとはこんなにも楽しいものなんだと感じてほしい。
わたしが助力させていただいた方は、その方の中のコミュニティで最もおしゃれだと言われる人になってほしい。そしてその周波数を感じ取ってくれるような感度の高い人が、もっと日本に増えてほしい。
よい仕立てのスーツを作ることができるテーラーは、世の中にたくさんいらっしゃいます。しかし、全身のスタイルをしっかりとコーディネートでき、本質的なおしゃれを提案できる場所は、なかなか探しても見つかりません。
「洋装に関してはすべて任せてください。何か困ったことがあったら、いつでも連絡ください」といえる存在。テーラーでもなく、スタイリストでもなく、デザイナーでもない。今ある職業では語ることのできない職業だからこそ、自らを「洋装士」と名乗ったのです。
ファッションは人生を楽しむためのツールのひとつです。それ以上でも以下でもありません。しかしそのツールは、使い方によっては凄まじい力を秘めている。それを知ってほしいのです。それらの思いをこめ、「BERUN」を立ち上げました。フォーマルウェアを通して、人生そのものを変化させる。それがわたしの仕事です。
BERUNは、一生かけてこれからもファッションを追求し、磨きをかけていきます。
この文章を何らかのご縁で見てくださり、明日からのファッションの観点が、ほんの少しでも変われば、最上の喜びです。お忙しい中ご拝読いただきまして、本当にありがとうございました。
BERUN 竹内大途
Atelier BERUN
東京都港区南青山5-12-3 小田急南青山マンション 801
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