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第3章 ジャケット
正しい袖丈のバランス
街を歩いていますと、多くの人が、袖丈の長いスーツを着ているように見受けられます。これは既製服の時代になり、あらかじめ長めに作っておくことで、短くすることもできるという発想からきているのではないかと思っています。
また、袖丈の正しい長さも的確に説明することができないショップスタッフが増えてしまっているのも現実問題としてあるのかもしれません。ジャストサイズは、ご自身が知っておく必要があります。
手の甲を包み込むほどの長過ぎる袖丈のスーツや、短すぎてシャツのカフスが堂々と出ている袖丈は、NGです。
まず、シャツの立ち位置から説明いたします。シャツは本来下着であり、スーツを素肌に触れさせないために存在しています。スーツの袖丈が長過ぎると、スーツの袖先が素肌に触れてしまい、スーツを汚れから守るという本来の役割を担えなくなってしまうのです。このベストバランスは、約1,0〜1.5cm、スーツの袖からシャツが出るのが美しいと言われています。
<理想的な袖丈>
このように計算していくと、おのずとスーツの袖丈の正しい長さが見えてきます。腕を垂直に下ろし、手首を外に90度に曲げたとき、手の甲にスーツの袖の端が触れるくらいがちょうどいい長さです。
このように、男性の洋服は、1から100まですべて理屈と方程式で構築されています。昔から流行は常に作り出されるものの、それらがスタイルとして根付くことはほとんどありません。クラシックが百数十年大きな変化はなく、スタンダードであり続けています。“スーツは着る世界遺産”といわれる所以はここにあります。
昔、お客様についていき、超有名ラグジュアリーブランドのスーツコーナーについて行ったことがあります。お客様は上背は低く、ふくよかな体格をされた方で、お世辞にもそのブランドのスーツが似合うと思える人ではありませんでした。
その方がブランドのスーツを試着されたのですが、そのときのスーツの袖が、手の甲をすべて覆い尽くすほどの長さでした。
わたしはたまらず店員に、
「これは長いですよね?」と言ってしまいました。
しかし店員の回答は、
「私どものブランドの理想の長さはこのくらいです」
だったのです。
上背の低い、ふくよかな体格の方が、手の甲まで隠れた袖の長いスーツを着る。イメージをしていただきたいのですが、お父さんのスーツを借りてきたお坊ちゃんにしか見えなかったのです。
そのとき、いくつかのブランドは、着る側のことを決して第一優先せず、ブランドイメージを先行して売ることがあるということを感じました。服に着られる人にならないよう、ぜひ正しいサイズを覚えておきましょう。
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