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第1章 洋服の哲学
英国式ビスポークのメリットとは
英国式のビスポークには、メリットが大きく分けて3つあります。
まず、1つ目は、変に目立たないこと。それでいて、無口ながら圧倒的な存在感があること。
2つ目は、体型の変化に踊らされなければ、10年は悠に着ることができること。
3つ目は、体型を見事に隠してくれ、それをよりよく見せることができること。
言ってしまえば、英国式のビスポークは、この3つにすべてが詰まっているとも言えます。
つまり、お洒落な雰囲気であったり、流行に乗っている、人と違ったものを着る、という話とは極論、無縁の世界なのです。
もし洒落た雰囲気のオーダースーツがいい!ということでしたら、もしかしたら、イタリアスタイルのサルトリアの方が合っているかもしれません。
また、お洒落な洋服なら、街に売っているブランド物の方が洒落ているものはたくさんあります。
安価で良心的なオーダースーツの店でしたら、要望を伝えれば、今ドキのタイトフィットなスーツを作ることも快諾すると思います。しかし、それでは真のビスポークの価値は感じることはできないと私は思います。
今までビスポークをしてみて、「なんだかイマイチだなぁ、思ったものが完成してこなかった」という方は、ここの両者の考え方に相違があるのかもしれません。
ビスポークのサイジングは既製服とは大きく異なります。初めてオーダーをされた方が戸惑うのはこのためです。
まず、ビスポークには適切なゆとりがあります。上に写真を載せていますが、このお尻から下にすっと伸びるラインは、既製品では出せません。
大抵は、お尻の下のラインに横線が入ってしまいます。そのラインは、生地が足りていないため、横に生地が引っ張られていることのサインです。
しかし既製品では、1着ずつその人のサイズに合わせて作ることができないため、線で合わせるのではなく、点で合わせます。
点で合わせるということは、1点でもゆとりを持ってしまうと、全体のラインに違和感が生まれてしまうのです。
つまり既製品は、全体をタイトにしなくては、売れない設計になっているのです。
ビスポークはその人の身体のラインに沿って作ることができるため、点を意識せず、線で全体的に理想的なゆとりを作って合わせていくことができます。
この2つは、根本的な考え方、作り方が違うのです。
ここまで聞いていただけると、わざわざビスポークをして、「タイトシルエットがいい!!」というのは、あまりスマートな考え方ではないことをご理解いただけるかと思います。
タイトシルエットをお探しであれば、既製品でいくらでもあります。今ドキのブランドや、モードブランドでもいいです。
極論を言ってしまえば、タイトフィットやビッグシルエットという極端なサイジングというのは、作り手が悩む必要がない、簡単なシルエットなのです。
程よいゆとり、これが一番ムツカシイ。だから、しっかりと合った洋服を着た人は美しいのです。
やたらと生地やら形、デザインにこだわりすぎてしまい、本来一番大切な要素である3つをすっかり忘れてしまうと、ビスポークの価値は半減してしまうことも大いに考えられます。
まずはご自身の身体、体型のくせを理解して、どのようにしたら理想の形になるのかを、テーラーに考えてもらい、その意見を話し合う。そうすることで、おのずと理想的なシルエットは決まってきます。
ビスポークと、安価なオーダースーツ、街に売られている流行りのスーツとの三者の大きな違いはここにあります。
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