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第11章 その他
物を持たないことが幸せ?
2021年から、風の時代と言われ、200年続いた地の時代から新しい時代になった。と言われています。
所有する時代から、シェアする時代へ。
物に固執していた時代から、大きく変わったそうです。
ミニマリストというような、物を持たない思想を耳にするようになり、”トキメキ”により、物を手放して解放される。そんな風潮が強くなってきた昨今。
この章はそんな時代の変化と、モノ好きなわたしの一意見をお伝えしたいと思います。
まず大前提として、わたしはモノは人の気持ちを豊かにする力があると思っています。
お気に入りのものに囲まれることで、何か人生で困ったことがあっても、それに触れることによって落ち着く、癒される。良いものにはそんな力があります。
少し話が違いますが、バイク好きなお笑い芸人がツーリングをしながら、
「若い奴が人生悩んでたら、つべこべ言わずにバイク乗れって言いたいですよね」
と話していて、私はこれは真理だなと思いました。
人は外的要因で発生するトラブルを、自らの力だけで消化するのはとても力のいることです。
それこそ、精神統一をして、自己を見つめる。そして起きた事と自分の気持ちの中にあるものを別のものだと切り分ける。
そして呼吸を深くして、気持ちを整える。
そんな簡単な話ではないですが、自分1人であらゆる物事を解決できる人はそんなに多くはないでしょう。
何か困ったことや、力が欲しいときに、満たしてくれるのは、自分の身の回りにあるお気に入りのものだと思います。
物を持たずに生きていくというのは、禅の世界に通じるものがあります。
マインドフルネス。今を見る。
物という支えがない場合は、目に見えないものを強く感じる力が必要です。
それには精神的な鍛錬が必要です。
戦後、仏教を剥がされ、無宗教になってしまった日本には、そもそも物を持たずに豊かに生きるというのは非常に難しいの状態にあるのです。
私の周りにいる人でも、モノを持たずにその人らしく軽やかに生きている人はいますが、その人たちはみな、精神を整えるための何かを行っています。
お茶をたてたり、瞑想をしたり、日常的なことであれば運動をしたり。
ものに頼らないのであれば、その分精神面で自分を支える必要があるのです。
わたしはそこまで強い人間ではない。だから、美しいものに触れたいのです。自分の弱さを受け入れることも、私は強さだと思います。
人の手がかかったものを持つ
トキメキや断捨離によって無くなるものというのは、おそらく多くが大量生産された物だと思います。
わたしが物を買うときに常に意識しているのが、人の手がかかっているものを買うということ。
例えばコップにしても、プラ製の軽くて割れないコップではなく、作家さんが作ってくれた陶器のものにする。
洋服もそう。ファストファッションを全面的に否定するわけではありませんが、作られている現場は決して心地のいい場所ではありません。
劣悪な環境で作られた大量生産品には、愛もなければ感謝も湧きづらいです。
そのような洋服を着て、ダメになったら捨てる。その行動を繰り返すということは、自分という存在そのものを大切にする行動とはかけ離れていると私は思います。
良いものを持つということは、自分を大切にしているという表れでもあります。
良いものに触れ、感動して、それを身につける。
それは一つの自己愛でもあります。
手がかかったもの、ストーリーがあるものに囲まれている自分を愛せないはずがありません。
人が手をかけて作ってくれたものには力があります。
物を手放して解放される!という思考を強く発信している人には、このベクトルが欠けています。
「物から解放推進隊(笑)」は、洋服というジャンルを、大きくこの2つに分けています。
①ファストファッションの安い服
②高級なハイブランド服
この2つを挙げて、
「ほら?洋服いらないでしょ?」
と言うのです。
世の中の多くの方は、洋服に限らず、あらゆる物をこの2ジャンルに分けます。安価なものとラグジュアリーなもの。
この分け方は不正解なのですが、致し方ありません。なぜなら、世の中にある99%のものはその2つで構成されているからです。
残り1%の人の手がかかったものというのは、マーケティングやブランディングの力で世に出てくるものではなく、自ら探し出して見つけるものです。
その労力を使った人だけが出会うことができるものなのです。
人の手がかかったものに囲まれて生きるというのは、ただお金があるからという理由で手に入れられるものではありません。
究極のシンプルとは
ノームコアという言葉があります。
よく例として挙げられる人物でいえば、スティーブ・ジョブスでしょう。
彼は毎日同じ黒のタートルネックを着て、同じ洋服を着続けていました。
そんな彼をダサい。と一蹴する人たちがいます。
ですが、彼があの服装に行き着くまでに、色々と熟考したのを伺えます。
なぜなら、彼が着ている黒のタートルネックはイッセイミヤケのもの。
もし彼が服装に全くの無頓着であれば、イッセイミヤケまで辿り着かないでしょう。
彼は高いレベルでの変わらないワードローブを探求し、そのゴールが見えたため、そこに全ベットしたのが想像できます。
もう1人、マークザッカーバーグを例に挙げてみます。
彼はいつも同じグレーの丸首Tシャツ。そんな着こなしを周りはダサいと言いますが、彼がいつも着ているTシャツは、ブルネロクチネリのものです。
他人には気づかれなくても、自分のパフォーマンスを高めるために、普通のレベルを徹底的にこだわる。
その思いを感じます。
日本のベンチャー経営者層にこのマインドを持っている方は決して多くはありません。
服のことなんか考えられないから、ユニクロのTシャツに感動パンツでいい。
この選択は、2人の前者と大きくマインドが異なるのを感じていただけるでしょうか。
洋服選び一つをとっても、その人の精神のレベルがわかります。
普通だけど最上のものがほしい。
それは自分の感覚を育てる上で、とても必要な考え方だと思います。
洋装道を極める
わたしは洋服は一つの道(どう)であるとも思っております。
洋装道に入り、洋服を通じて精神を磨く。
そしてその道の先にあるのは、どんな服を着ていても、わたしはわたし、という自分を手に入れることです。
タキシードもTシャツも、同じ気持ちで着る。
それができれば、洋装道では黒帯だと思います。
魂を磨くという人間のゴールに行くために、何の道を通るのか。
わたしはその道に、365日必ず着るもので、会う人に自分という存在を伝えることができるもの、ということで、洋装道を選びました。
今日はめんどいから、服着たくないなぁ。とはなれないわけで笑
日々の着るものに意識を向けて、大切に生きる。
道の始まりはそんなくらいでOKです。
その先には、何を着ても格好良く着こなせる大人が待っていますから、想像するだけでワクワクしますね。
2024年5月擱筆
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