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第1章 洋服の哲学
和洋折衷はご法度
最近は減りましたが、スーツに和を用いるのは絶対にやめましょう。
「日本独自のスーツスタイルを,,,」
と耳に優しいうたい文句ですが、洋に和を織り交ぜるのは、業界ではナンセンスとされています。なぜなら、とても難しいからです。
裏地を和柄にしたり、小物や見えないところに和を入れていこうという発想は昔からありますが、未だかつて評価されている着方はありません。和洋折衷はとても難しく、和装の柄の知識や人格など、あらゆるものを兼ね備えた人がやることで、初めて評価をされるものだと思ってください。
裏地が異様に派手なものを好む方。例えば和柄を用いたり、もっと極端な方でいえば、虎や龍などがいたりするものです。
バブルの時代にとても使われていたものですが、今でもその名残で、裏地を派手にしたいという方は一定数いらっしゃいます。
柄はなくとも、カラー診断で自分の似合う色は赤だと教えてもらったから、ネクタイからスーツの裏地まで全部赤です!という方も当てはまります。
このスタイルが好きな方が、この着方を正当化する一つの理由としましては、昔の奢侈禁止令(俗にいう贅沢禁止法)があるでしょう。
町人は「絹・紬・木綿・麻布」以外の物を着てはならず、熨斗目(のしめ)などの衣装を着ているものがいれば、同心は捕えてその場で衣装を没収すべきである。
(以上Wikipediaより抜粋)
当時の洒落者たちは、表地は地味でシックなものを使い、裏地を表地よりもとびきり高い派手で高級な裏地を使って楽しんでいた時代がありました。そのことから、本来日本人はそのような楽しみ方が合っていると仰る方もいるかもしれません。
しかし今は贅沢を禁止されている時代ではありません。そして時代も何百年と進んでいます。
そして最後に、決定的な違いがあります。
着物は和服なのに対して、スーツは洋服です。古くから伝わる着物の粋な精神はスーツには合わないという感覚。そしてそれを合わせた場合、純粋に不協和音が生じるというのは感じていただけるのではないでしょうか。
和洋折衷というのは、昔から服飾に関わる人は挑戦しなくなるジャンルではありますが、プロであればあるほど、和洋折衷ほど難しいものはないと言います。
着物の粋な演出の仕方をスーツに持ち込むのではなく、郷に入っては郷に従いましょう。スーツを着たときは、スーツスタイルで粋な演出をするようにした方が確実にお洒落になります。
たとえば裏地はペイズリーにする、またはドットにする、というような、洋の美のおしゃれです。それが似合う方というのも東洋人ではなかなか多くはありませんが、裏地で魅せたい!という方は西と東の国を混ぜ込むのではなく、その国のスタイルの中で遊ぶことをお勧めします。
わたしなりに、裏地にこだわる洋服で、素敵だな、と思う例をこちらに上げておきます。
表地は何の変哲もないウールのコート生地ですが、裏地はなんと全面ラビットファーです。
表よりも高価なものを中に仕込む、ということの考え方で、わたしはこれはとてもエレガントな発想だなぁとはじめて見たときは胸を打たれた気分でした。
こちらはわたしの私物で、ヴィンテージの古着で見つけて購入したものです。これは現在では動物愛護団体の力によって絶対に作ることはできないでしょう。
わたしがここで最後にお伝えしたいことは、ファッションと趣味をごちゃ混ぜにしてはいけないということです。
その国毎の美しさがあります。それをしっかりとわきまえて、法則の中で自分らしさを出すことが真の洒落物だとわたしは思います。
最終編集2023年6月
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