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第13章 映画
グレートギャツビー(華麗なるギャツビー)
ファッションを語る上でこの映画は、上位に上がる作品でしょう。2012年にディカプリオ主演によって再構築されましたが、わたしはロバートレッドフォードが出ている旧作の方が好みです。
「ギャツビールック」というスタイルを世に広めたエレガントなスーツスタイルは、一見の価値があります。
この作品の衣装提供はラルフローレン。まだ氏が有名になる前です。この作品をきっかけに、ラルフローレンの名は世界的に有名になりました。
冒頭、ニックがモーター付きボートに乗っているシーンから始まります。まず、このニックのスタイルに乾杯ですね。
ただの白のセットアップかと思いきや、後ろを振り返ったとき、背面にアクションプリーツが付いています。
休日に着るホワイトリネンスーツの素晴らしい例です。
セットアップとなるとハードルが上がりますので、ぜひ上着だけでもあれば、夏の休日のいいお供になります。
ゴルフのシーンでは、デイジーの夫、トム・ブキャナンが8つボタンのブレザーを着ています。
8つボタンなんてなかなか着る勇気が出ませんよね。
ラウンドカラーシャツに右下がりのレジメンタルタイと、アメリカ的な服装です。
こんな格好をしてゴルフをしていた時代が微笑ましく思います。なんて豊かな時代だったのでしょう。
ギャツビー演じるロバートレッドフォードのスタイルは、生まれながらの貴族階級のスタイルではなく、成り上がったことによるおしゃれだと伺えます。
少し誇張しているスタイルが、絵的にも映えてとても格好良いです。
ですが、わたしはこの映画で着目すべきはニックのスタイルにあると思っています。
ニックは中流階級の一般的なビジネスマン。彼が着ている服装が、最も理にかなっていて、私たちの着こなしの参考になるコーディネートです。
ニックが何気なく着ているこのベージュのスーツもとてもいい雰囲気ですね。
ギャツビーは白のスーツが印象的ですが、この着こなしは白のスーツをこよなく愛する米作家、トムウルフによって酷評されていました。
白を極める人にしか見えない、足りないところがきっとあるのでしょう。
日常的に白のスーツを着こなす人と、演技のときにしか着ない役者でしたら、深みの出方が違うのは納得のいく話ではありますが。
ダブルのベストに、幅の広いラペルのシングルブレステッドスーツ。ゆとりの出し方も余裕があり、とても恰幅がよく、男性的に見えます。
この時代に流行ったピンホールカラーも印象的です。
ちなみにピンホールカラーはアメリカで好まれているデザインですが、欧州ではあまり使われていません。
これは見せることを美徳とするアメリカと、奥ゆかしさを重んじる欧州(特にイギリス)との違いでしょう。
ニックの家での服装も程よいカジュアルで格好いいです。
ラルフローレンの世界観が際立っていますね。ショールカラーのニットに、インタックのトラウザーズ。カジュアルとはこうだ‼︎と今の人たちに伝えたいですね。
デイジーと数年ぶりの再会を果たし、愛のひとときを愉しむ2人のときのギャツビーの服装も素敵です。
スーツに合わせるはずのロンドンストライプのクレリックシャツを、これだけ自然にエレガントに着崩すとは流石です。
この白のニットに白のストライプのトラウザーズというスタイルも格好いいですね。
そしてカフスボタンを着けている辺り、カジュアルにしすぎない、彼なりのカジュアルダウンの線引きを感じます。
これは有名なシーンですね。
ギャツビーが色とりどりのシャツを空中に舞上げ、そのシャツの美しさにデイジーが涙するというシーンです。このときに使われているシャツは、すべて英ターンブル&アッサーのもの。
「ピンクのスーツを着たやつがオックスフォード出なはずがない」
デイジーの夫に言わしめたギャツビーのルックです。
ラルフローレンらしいコーディネートだと感じるところは、コーディネートに暖色と寒色をどちらも合わせていることです。
先ほどのニックのニット姿のときも、ベージュのニットにベージュのトラウザーズに対して、シャツはブルーのストライプを合わせています。
これをベージュやブラウンのシャツで合わせていると、また違った印象になります。
このピンクスーツにブルーのタイを合わせる辺り、コーディネートをぼやかせずに、しめるところはしめる、という意思を感じます。
3人が外で待つシーン。
この映画は服装がエレガントなのに対して、内容がとてもこじれていますが、このシーンはまさにそれを感じさせるところです。
美しく儚い、という言葉がまさにこの映画にぴったりでしょう。
最後に、わたしはこの映画が大好きで、事ある毎に何度も観ていますが、ロバートレッドフォードはやはりもっと土臭い、若造のような役柄が合っていると思います。
スティングなんか、まさに彼にぴったりの配役だったと思います。
一生懸命背伸びをするチンピラという、微笑ましさを感じる、清々しい若者という役柄が合いますね。
この作品は彼がそういう役柄から脱皮したい表れだったのかもしれないと思うと、また違った角度から楽しめますね。
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