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第2章 スーツ
スーツの下のボタンはなぜ開ける?
スーツにはルールがたくさんあります。
今は当たり前になっているルールも、それができたきっかけを遡ると、なんだか微笑ましく思えるようなことが多いのです。
例えば、スラックスの前後になぜ縦の線が入っているのか、ということは別の項目で書いておりますが、ふとした事故というか、間違いから始まった仕様です。
そうやってスーツの歴史をひもといていくと、より洋服を着る事を楽しむことができるようになります。
スーツの下のボタンはなぜ開けるのか?
なぜ開けるようになったのか、お分かりの方もいらっしゃるかと思いますが、意外と明確ではない方も多いかと思います。
「シワになるからじゃない?」
「そうやって教えてもらったから」
というように、曖昧な意見が耳に届きます。
これも昔、この着方が生まれたきっかけがあります。
あくまでこれはひとつの諸説になりますが、遡ること1900年代、20世紀初頭の出来事です。
当時イギリスの国王であったエドワード7世は大変な美食家でした。
美食家のあまり、体型が立派になり、ある晩餐会の席で窮屈さに耐え切れず、思わず下のボタンを開けてしまったのです。
それを見た周りの人が、「国王に恥をかかせてはいけない」と、皆が下のボタンを開けた。
これが始まりと言われており、今は「アンボタンマナー」と呼ばれ、着こなしの一般的な常識になっています。
ちなみにこのエドワード7世はファッションや食事、ハンティングなど、さまざまな趣味を最高に贅沢に楽しんでいた方でした。それでいてとても国民に愛されていたという、まさに豊かな時代を生きた人だったのです。
英国にとっての古き良き時代というのは、この頃なのかもしれません。
今は孫に当たるウィンザー公がファッション業界でもてはやされていますが、このエドワード7世が装いの世界に残した功績はとても大きいです。
彼の在位は、1901年から1910年とわずか10年でしたが、現代のスーツの着こなしの礎をこの10年で作ったといっても過言ではないでしょう。
下のボタンを留めるのは絶対NG?
では上着の下のボタンを留めている人はみな落第なのか!?と言われると、そうも言えないのです。
というのも、この仕様が生まれたのが1900年代初頭なので、それよりも前の着こなしのスタイルをされている方は、下のボタンをあえて留めて着ることもあります。
その当時の着こなしに忠実に沿う洋服を愉しむ方もいらっしゃいますので、1800年代の着こなしを愉しみたい方、懐古主義の方は、下のボタンを留めて着てもOKです。
現代のスーツは、下のボタンを留める前提ではなく、留めないものとして作られているため、留めれば違和感が出てきます。
19世紀のスーツの裾のラウンドは、もっと緩やかで、下のボタンを留めてもシルエットが変わらないラインで作られていました。
「よく分からないけど、何かおかしいな?」
と思われたら、ご自身の感性を信じて、何が間違えているか、じっくり考えてみるといいでしょう。
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