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第1章 洋服の哲学
床屋と仕立て屋は変えてはいけない?
この項目は結構濃度が高めの内容です。
強い刺激に慣れていないお方は、次のページに進んでください。笑
さて、前置きをしたところで、たっぷりお話ししたいと思います。
イギリスの昔の言葉でこのような格言があります。
「床屋と仕立て屋は変えるな」
この言葉には、とてもイギリスらしい想いが込められています。
床屋と仕立て屋、この2つに共通すること、それは、
その人のアイデンティティを作るということです。
イギリスではサヴィルロウという仕立て屋横丁がありますが、そこに通う方は、
「去年はハンツマン(テーラーの名前)で作ったから、今年はアンダーソン&シェパードで作ろうっと」
とは決してなりません。
なぜなら、それが自分自身にとって全くメリットがないことを知っているからです。
日本の方で、仕立て屋のスタンプラリーをしているような方がたまにいらっしゃいます。
「今まで全部違う仕立て屋で作ってきたなぁ。次は◯◯テーラーで作ってみようっと」
一見楽しそうに見えますが、これは実は、あまり賢い選択ではないのです。
仕立て屋と長く付き合っていくことの最大のメリットは、その人の人となりをしっかりと覚えてもらえることです。
ワードローブも頭の中に入っていきますので、このお客様に、”今”、”この先”何が必要なのか、プロ側から鋭角にストライクゾーンど真ん中で提案することができるようになっていきます。
作ってきた洋服が増えれば増えるほど、着方の癖、好みもわかってきます。どういう風に着て、人生でも何が好きで何が苦手なのか。そういう面まで長く向き合っていくことで、より深く知ってもらうことができます。
他人とそんなにどっぷり付き合いたくないヨ。という方は、大型店、量販店に行かれることをお勧めいたします。
しかし、プロフェッショナルと人生を高め合っていきたいという方は、ビスポークは間違いのない選択です。
わたしはビスポークすることの価値は、ただ洋服を作ってもらうだけではない、別次元のところにあると思っています。
ヘアースタイルにうつつを抜かすのは、、
「床屋と仕立て屋は変えるな」
この言葉で伝えたいこととしては、「髪や服にうつつを抜かしている時点で紳士ではないよね」ということです。
髪型も洋服も、日々流行で移ろいでいくものです。
その流行に踊らされるのは野暮であり、もっと根幹に根を張り、時間をかけることが大切である。というメッセージなのです。
数年前、ツーブロックに刈り上げ、上の髪型をメデューサのようにパーマをかける髪型が流行りました。(今では誰一人やっていないですね。流行とは閃光のように眩く、そして一瞬。刹那的、そういうものです)
わたしのお客様でも、首から下はスリーピースのクラシックスタイルなのにも関わらず、首から上は整えすぎた眉毛に、イマドキお洒落ヘアーという方が少ないですが、いらっしゃいます。
押し付けに聞こえてしまうかもしれませんが、そこで時代感を入れてしまいますと、その方のスタイルは完全には仕上がらないのです。
「あれ?この方、スーツはとても素敵なのに、髪型はすごいイマドキね。スーツはきっと他の人が見立ててくれているのかしら」
と思われます。
また、時代を取り入れたヘアースタイルを提案する方は、女性のスタイリストさんが多い傾向にあります。
あっ女性がわるいと言いたいわけでは決してありません。(勘違いされないでくださいね)
ですが、クラシックの世界を根本的に理解してくれる女性はかなり稀有な存在だということは紛れもない事実です。
別の章でも書いていますが、ヨーロッパ、アメリカでは、女性が男性にネクタイを選んでプレゼントをするということはあまり良しとされていません。男性が働く世界は、女性には完全に理解し切ることはできないからです。
男女差を無くそうとしている今の時代とは正反対のテーマなので、反旗を翻す方もいらっしゃるかと思いますが、普遍的である美しさを求めている方は、改めて考えてみてもよろしいのではないかと思います。
ファンシーでお洒落で、トキメクような人生を歩みたいのでしたら、女性からアドバイスをもらうのがいいと思います。
しかし、普遍的な美を求めている方は、男性に任せるのが近道だと思います。
全ては適材適所、何を目指していくかで、誰を師に仰ぐのかははっきりと変わっていくものです。
美容室か理容室、どちらが良いのか
これはその店次第なので一概には言えないのですが、ファッション性が高い髪型は美容室、普遍的な髪型を作るのは理容室が多いです。
もし、馴染みの美容室があり、そこから浮気したくない。しかし髪型はコレ!という節の通ったヘアースタイルを作りたい、という状況でしたら、そのお世話になっているスタイリストの方に、
「今回から、何もお洒落さを出さないでください。ハネない、遊ばない、シンプルな髪型にしてください」
と伝えてみてください。
かく言う私も、毎月髪をお願いしている方は10年以上の付き合いになる美容師さんです。
腕前はピカイチ、色んな髪型ができる。という方ですが、私は毎月同じ髪型でいい。という人なので、最初の頃はお互いの求めているレベルまで達しないこともありました。
しかし、じっくりと話し合い、自分自身が作り上げていきたいスタイルを共有し続けることで、徐々に精度が上がってきました。
今では何も言わずに、いつも通りの理想的な髪型に仕上がります。
何もしないということが、実は最もレベルの高い仕事です。
パスタでも、カルボナーラが1番難しいと言うシェフがいるように、シンプルであればあるほど、職人の腕の見せ所なのです。
最後に、最高のイメージトレーニングと致しましては、昔の映画を観ることでしょう。
名俳優という方々に共通していることは、誰1人、髪型でチャーミングさ、ファッショナブルさを出そうとしている方はいないということです。
とは言いましても、いきなり大人しい髪型になっても、最初は自分が一番見慣れません。
「なんだこれ!!似合わない!!」
とブルーになる気持ちも出てくるかもしれません。
しかしそこはぐっと我慢です。しばらくすると見慣れてきて、いつしかそれが普通になります。
髪型や服装、そのような見えるところで個性やお洒落さを出そうとするのではなく、もっと高度な愉しみがあることを、ぜひ知っていただきたいです。
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