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第11章 その他
スーツスタイルに合うメガネとは
最初にお伝えいたしますと、この項目が全The Bookの中で最長になりました。
わたしの眼鏡愛が止まらず、気がつけばかなりの長さになりました。気長に、気軽にお読みいただけたら幸いです。
目が悪い方の欠かせないアイテムといえば、眼鏡ですね。
というのも過去の話。今は目がいい人も、伊達メガネとしてファッションの一部に使う方も増えてきました。
わたしは昔から目が悪かったので、眼鏡を長年多用していますが、本格的に眼鏡に凝り始めたのはこの仕事を始めた頃からです。
そもそも、わたしがこの仕事を始めた2010年頃は、まだ眼鏡でお洒落をするということが一般的ではなく、お洒落のベクトルも今とは異なっていました。
当時の主流はメタルフレームで、バキバキにカッコつけているようなエキセントリックなデザインのものばかりで、今のような、シンプルなセルフレーム眼鏡を見つけるのは非常に困難でした。
ちなみに(お恥ずかしながら)、わたしが10代の頃にかけていた眼鏡はこういったデザインのものでした。
このような眼鏡をお好きな方もいらっしゃると思います。なので、決して否定はしませんが、スーツに合わせるべきメガネではありません。
また、こういった好みの違いは、もはや違う”国”同士の話なのです。思想が違いすぎて、相容れない、むしろ相容れる必要すらない話、これは全くもって思想の違いなのです。
車で例えるなら、上記のような眼鏡がお好きな方は、後ろに翼を生やした日本のスポーツカーをお好みの方に多いと思います。そして眉毛は綺麗に整えているでしょう。
スーツに合う眼鏡とは何かを一言で言いますと、”シンプルで上質なものを選ぶ”に尽きます。
余計なデザインや装飾をあれこれ付けているものではなく、理にかなったデザインでシックであることが理想です。
車に翼を付けたりシールをベタベタ貼る感性とはベクトルが全く異なります。
今は格安眼鏡屋にも、”それっぽい”いい雰囲気の眼鏡が置いてありますが、当時は量販店には上記のような物ばかりが置いてありました。
そんな中、店を何件も探し回り、2010年にわたしが初めて購入したセルフレームはこちらです。
オリバーゴールドスミス -VICE CONSUL-
今は色付きレンズを入れていますが、当時は透明なレンズを入れ、眼鏡として使用していました。
2010年当時は、今のようにセルフレームはたくさん出回っておらず、いくつかの専門店にしかない状況でした。
昔の写真なのでお恥ずかしいですが、スーツに合わせるとこのような印象です。
イヴ・サンローラン本人も同じようなフレームをかけていました。眼鏡で印象を残すにはこのくらい強いフレームがいいでしょう。
長い間愛用していましたが、少しずつ、他の形のものも欲しくなってきて、わたしの眼鏡巡礼の旅は始まりました。
カジュアル度★★★★☆
ドレス度★☆☆☆☆
ファッション性★★★★☆
セルフレームは、現在作られているものはほとんどがアセテートという素材で作られています。昔はセルロイドが一般的でしたが、今は数がかなり少なくなっています。セルロイド特有の光り方が好きな方もいらっしゃるので、見つけたらラッキー、というケースもあるでしょう。
スーツに合う眼鏡とは
スーツに合う眼鏡とは何か、を考えてみても、まずどのようなスーツスタイルのものを選ぶかによって、全体の印象は大きくかわります。
まず、ツルツルピタピタでタイトフィッティングなイマドキスーツをお求めの方でしたら、クラシックなセルフレームの眼鏡は合わないでしょう。(芸能系の方はあえてそのような合わせをする方もいますが)
もし、テーラードはクラシックなスタイルを着たい、ということでしたら、これから先の話も耳に入りやすいと思います。
大きく考えて、似合うもの、似合わないものをざっくり分けるとすれば、当たり前ですが、自分の顔、形に沿っているかどうかです。顔の輪郭、後これは大切な要素ですが、眉毛との角度のバランスもとても重要です。
また、靴同様、眼鏡をかけ慣れていない方はついつい大きめの眼鏡をかけてしまいがちです。
しかし、大きすぎる眼鏡はなるべく避けた方がいいでしょう。そのワケもご説明いたします。
セルフレーム
メタルフレームよりもカジュアル要素が強いフレームですが、近年では安価な眼鏡屋でも大量に扱われるようになり、すっかり市民権を得ました。
わたしの持っているコレクションの一部をアップしていきたいと思います。
TART OPTICAL -ARNEL-
こちらはタートオプティカルのアーネル。素材は今は珍しいセルロイドのものです。わたしは垂れ眉なので、先にいく毎に吊り上がったフレームは似合わないため、多くのフレームが曲線を描いているものです。
フレームの厚みもちょうど良く、凛とした顔つきになるので、オンオフどちらでも活用できます。
カジュアル度★★★☆☆
ドレス度★★★☆☆
ファッション性★★★★☆
1940 Vintage Flame
こちらははじめて買ったヴィンテージの眼鏡。グリーンと黒がマーブルがかってなんともアンニュイな雰囲気のあるフレーム。こちらは今ではすっかり人気になったクラウンパント型。クラウンパントとは、トップのフレームの形が角ばっている特徴的なデザインのものを指します。
平たく言ってしまえば、わかりやすくファッション性を出したい方、または眼鏡で顔の印象を付けたい方にお勧めです。
スーツにももちろん合わせることはできますが、真面目なネイビー、グレースーツより、ファッション性の高いスーツ、ジャケパンスタイルに合わせた方がマッチします。
カジュアル度★★★★☆
ドレス度★☆☆☆☆
ファッション性★★★★★
Lunor
さぁ、これからクラウンパントが続きます笑
ですが、一つ一つの印象の違いを感じていただけたら幸いです。
こちらはエレガントなフレームを作るメーカー、Lunorのもの。黒一色で、一見普通に見える眼鏡ですが、うっすらクラウンパント型になっています。また、わたし的にとても気に入ったのが、このトップが先にかけて下に下がっていること。これが垂れ眉の人にとても合うのです。
眼鏡をかけ慣れていない方は、眼鏡をかけて眉毛が消えることは良くないことだと思われる方も多いようです。ですが、本当に似合う眼鏡をかけた時は、眉毛とフレームが自然にシンクロして、同化していくように見えます。(目と眉毛が離れている方はそうならない場合があります)
クラウンパント型ですが、細身のフレームのため、カジュアル感がなく、ドレッシーな印象になります。とてもバランスのいいデザインです。
カジュアル度★★★★☆
ドレス度★★★★☆
ファッション性★★★★☆
OLD FOCALS
こちらは前のLunorとは一風変わってかなりインパクトのあるフレームです。今流行っているレスカにも近しい匂いを感じますが、わたしは顔が大きいため、レスカは合いませんでした。(そもそも日本人はレスカが合う骨格ではないので、似合う方は本当に稀だと思います)
洋服はシンプルで、眼鏡で印象を与えたい時に、こういった特徴的なものは使えます。
リネンのスリーピースや、ツイードのスリーピースといった、古典的な服装に合うフレームです。
カジュアル度★★★★★
ドレス度☆☆☆☆☆
ファッション性★★★★★
セルフレーム+メタルフレーム
こちらはセルとメタルをかけ合わせたもの。この眼鏡はデザイン性が高く、ファッション的要素が強い眼鏡だです。
Persol
このフレームにはヒトネタありまして、わたしがイタリアのフィレンツェに行った際、広場でジェラートを食べていた男性がかけていた眼鏡があまりにも格好良すぎて、思わず話しかけてしまったのです笑
彼は丁寧に教えてくれ、買った眼鏡屋の地図まで書いて渡してくれました。そのままその足で、その店に行き、同じ眼鏡を買ったのです。(色違いで黒も買いました笑)
わたしの行動が大胆だと感じられる方もいらっしゃるかと思いますが、わたしは日本ではそんなこと絶対できません。ですが、海外の人たちは構わず、街でいいものを着ている、持っている人を見かけたら、迷わず話しかける人が多いです。ご飯屋さんで美味しい食事に出会うと、シェフを呼び出し直接褒める。そしてしばらく話していると普通にレシピをくれたりします。笑
ペルソールはあまり日本では知名度はありませんが、わたしはとても好きなブランドです。日本ではサングラスのイメージが強いですが、イタリアでは眼鏡の種類もとても多く、格好いいものがたくさんあります。
このフレームもシンプルですが、独特なファッション性を感じさせる眼鏡です。
カジュアル度★★★★☆
ドレス度★★★☆☆
ファッション性★★★★☆
ブロータイプ
ここでブロータイプの眼鏡をご紹介します。この眼鏡を見て、わたしが真っ先に思い浮かぶのは、マルコムXです。
彼がかけていたのはアメリカンオプティカルのもの。ブロータイプの印象としては、知性、強さを与えることができます。上の立場に立つ人、人をまとめていきたい方に合う形です。
彼の眼鏡はフロントのトップが丁番に向かっていっても下に下がっていっていません。この形にすることで、力強さを感じさせることができます。自分をどう見せるべきか、彼はしっかりと熟知していたのでしょう。
Oliver Peoples
黒と金のフレームで、クラシックとスタイリッシュの両方を掴んでいる眼鏡です。さすがモダンさとクラシックスタイルの両方をいいとこ取りした眼鏡を作っているオリバーピープルズです。
まさにスーツスタイルにうってつけのフレームです。
カジュアル度★☆☆☆☆
ドレス度★★★★★
ファッション性★★★☆☆
Yellow Plus
こちらも購入して10年以上になる古株の眼鏡です。
ゴールドベージュのセルフレームに、金のフレームがミックスされている上品な眼鏡です。
ダークスーツよりも、ベージュやグリーンのようなアースカラーの洋服に合う眼鏡です。
セルフレームは年数が経つごとに表面が白く曇っていってしまいます。それもアジではあるのですが、どうしても気になる場合は、購入した眼鏡屋に持っていけば、表面を薄く研磨して、購入当初の輝きに戻すことができます。わたしも何度かやったことがありますが、見違えるほどきれいになります。
夏の暑い日に眼鏡をかけた後、拭かずにしまっておいてしまうと、フレームが白く変色してしまうことがあります。そうなっても、研磨をお願いすれば元通りになります。
カジュアル度★★★☆☆
ドレス度★★★☆☆
ファッション性★★★☆☆
USH (現YUICHI TOYAMA)
横のフレームの途中でメタルフレームに切り替わっている、良くできた作りの眼鏡です。
見る人にだけわかる質の高さというのが、こういった眼鏡にはあります。
ブロータイプですが、ブリッジがセルフレームでできているため、そこまで強い印象は与えず、柔らかな顔つきになります。
カジュアル度★★★☆☆
ドレス度★★★☆☆
ファッション性★★★★☆
メタルフレーム
メタルフレームは、ビジネスの場であったり、夏の暑い場に、セルフレームだと肌にベタっとくっついて嫌だから夏はメタルにする、という方におすすめします。
しかしこのメタルフレームという部類には罠が多いです。というのも、これだ!というものがなかなか見つかりません。どうしてもきつく見えてしまったり、そのひとの本来の良い印象を引き出せずに、冷たい印象を出してしまうことが多いです。
わたしなりに、こういったものがいい、というのをピックアップしていきたいと思います。
Lunor
さすがLunorという品の良さです。ゴールドのフレームにレンズ部分はシルバーのコンビネーションになっているため、きつすぎず、柔和な印象を与えます。このレンズの形は縦にすると樽の形に似ていることからバレル型と呼ばれています。
メタルフレームを選ぶポイントは、鋭角な形の物は一切除外をすることです。曲線で作られているもので、柔らかな印象のするものを選びましょう。最初にお話ししましたように、鋭角なフレームは強い、冷たい印象を与えてしまいます。
カジュアル度☆☆☆☆☆
ドレス度★★★★★
ファッション性★★★★☆
STEADY
わたしがかけていて一番安心する眼鏡といえばこちらです。数ある丸型眼鏡の中からこれが完璧にフィットしました。丸型というものは星の数ほどある形ですので、めげずに探し続けていれば、これがベストだ!!というものにいつか出会えます。
眼鏡で飾らない、シックだけれども品のある印象を与えることができる丸型メタルフレームは老若男女、どなたにでもお勧めできます。
選び方で一つポイントとしましては、このフレームも、やはり大きめではなく、小さめを選びましょう。大きいフレームにしてしまうと、女性がおしゃれ目的でかけているような、可愛らしい(あどけない)印象になってしまいます。そこと品格は正反対ですので、なるべく小さめ小さめで探してみましょう。
カジュアル度★★☆☆☆
ドレス度★★★★☆
ファッション性★☆☆☆☆
金子眼鏡
今や有名ブランドになった金子眼鏡(かねこがんきょう)のフレーム。こちらはメタルフレームですが、レンズ部分に革に見立てた素材を巻き込み、クラウンパント型にしているシンプルながらおしゃれな形です。
眼鏡が好きな方には必ず聞かれる、痒いところに手が届いたデザインを作るのも、さすが金子眼鏡です。
意外と誰がかけても似合ってしまう懐の広さがあります。
もちろん、スーツスタイルにも嫌味なく合わせることができる、とても優秀な眼鏡です。
カジュアル度★★☆☆☆
ドレス度★★★★☆
ファッション性★★★★☆
安価なフレームでも格好いいものはあるのか?
最近ですと、いわゆる1万円以下でレンズまで込みで作れるおしゃれ”風”眼鏡屋にも、今ご紹介したような眼鏡は多く並んでいます。
ではそれでいいのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
これはスーツやその他、全てのジャンルに通じる話ではありますが、安価なものと本格的なもの、似たようなものでも価格は大きく異なります。その違いは、60点で満足するか、100点を求めるか、に尽きます。
それはご自身がどこで満足し、どこを妥協するか、という線引きをどこでするかでしょう。
わたしはそういった点では、眼鏡を必要としている方でしたら、いいものを1つか2つ持っておけば間違いはないと思います。
いい眼鏡はしっかりと作られているため、簡単には壊れません。わたしもはじめてオリバーゴールドスミスを購入したのは2010年でしたので、もう10年以上も使っていることになります。年単位で考えれば、決して高すぎる買い物ではないと思います。
良い物は長持ちします。そして、良い物と高級な物は違います。
また、安価な眼鏡屋では決してできないプロの技術があります。それは、フレームを顔の形に沿うように手で修正できるということです。
これを見てください。これは元々、真っ直ぐのフレームでした。そのままでしたら、わたしの顔には小さすぎて、着けることはできませんでした。これに熱を加えて手で修正していきます。これはその人の感性がそのまま活きる作業です。信頼のできる人にお願いしましょう。
安価な眼鏡屋では、ここまでの作業はできません。(できたとしても、技術の差は歴然です)
つまり安価な店では、フレームを広げて顔に合わせて巧みに広げることができないため、はじめから大きめのフレームしか置くことしかできないのです。または、小さなフレームは顔の小さな人だけがかけられるもの、というように線引きしてしまいます。
そうすることで、「自分は顔が大きいからこういう眼鏡しか合わないんだ、、」
と勝手な印象を植え付けられてしまうことが起こってしまいます。
大陸毎の眼鏡のあり方
欧州とアメリカでは、眼鏡の大きさが違うとわたしは思っています。
わかりやすく言いますと、欧州の方がよりコンパクトで、アメリカは顔幅いっぱいまで大きめのフレームをかけている方が多いように見受けられます。
これはほんの一部の資料ですが、ご参考になれば幸いです。
まず、フランスのみならず、世界的な名建築家、ル・コルビジェのスタイル。
眼鏡の横幅がとてもタイトなのがお分かりかと思います。ですがこれで顔にピッタリと合っているのはなぜかと言いますと、レンズの中心位置と、目の中心位置がピッタリ合っているからです。
眼鏡の大きさ選びで最も大切な部分だと思います。そこがピッタリと合っていれば、横幅が多少きつくても、なんら違和感はないのです。むしろ、そのサイズ感をうまく取り込むことによって、眼鏡を自分らしいアイコンにすることができます。
もう一人、眼鏡や髪型、髭など、外見で印象を決定付けることに成功した、フランスで最も有名な日本人画家といえば、藤田嗣治です。
彼の眼鏡のサイズも一見小さそうに見えますが、前述した通り、レンズの中心位置と目の中心位置が合っているため、見事に調和しています。欧州の方は、靴でもそうですが、小さくあることに美学を感じることが多いのかもしれません。自分なりのジャストサイズを探求した先に、こういったスタイルが生まれたのでしょう。
対してアメリカですが、これまたこれだ!という参考資料が見つからず、わたしの頭の中にあったイメージを掘り起こしたものでお伝えいたします。
映画「アラバマ物語」に出てくる主演グレゴリーペックの眼鏡姿が、なんともアメリカ的だなぁと感じました。(余談ですが、アラバマ物語は素晴らしい作品なので、ぜひご覧になってみてください)
先のお二人に比べて、フレームの大きさが少し大きいのを感じていただけるでしょうか。これはアメリカ大陸の広さが車から靴、眼鏡と、全て大きめがいいというように感じさせた結果なのでしょうか。真偽の程は定かではありませんが、欧州とアメリカを比べてみると、大きさという面で明らかな違いがあります。
ここまでお話ししますと、例えばご自身がアメリカントラッドのスタイルを極めたい、ということでしたら、少し大きさにゆとりを持たせた眼鏡でもいいかもしれません。
ヨーロッパのスーツスタイルをお求めでしたら、少し気を遣って、小さめのものを探してみることをお勧めします。
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