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第10章 季節
四季を意識することの大切さ
あらゆる洋服が簡略化され、世の中から難しい服が消え、ジェンダーレスで思想を感じさせない洋服が増えてきました。
わたしは常日頃、皆さまに「オールシーズン」、「通年着られる」、というような謳い文句の洋服には気をつけてください。と話しています。
考えてみてください。36度の灼熱の真夏にも着用できて、10度を下回る冬にも着られる洋服なんて、あるわけないということを。
もしこれを可能にするなら、どちらかの季節を妥協しなければなりません。それはどちらかというと、日本の場合は冬です。
つまり冬は上にコートを着れば耐えられますよね?ということになり、厚みや耐久性を無視して、夏でも我慢すれば着られるくらいの薄手で軽い生地で洋服を作るということになります。
厚みのある生地(鍛え上げられた肉体)ではないヤワな洋服が、春夏秋冬オフシーズンなく登板させられるとどうなるでしょうか。もちろん、すぐにガタが来ます。
安物を買って1,2年着てすぐに潰して新しいものに買い替えるという、決してワクワクしないサイクルに見舞われます。
その結果、洋服なんてどうでもいい、と灯火が消え、諦めの境地に立たされてしまうのです。
昔の日本人は四季を大切にしていた
昔の日本、といいましてももう何百年も昔の話です。古今和歌集という色々な人の歌を集めた本がありました。
このような歌を集めた本というのは世界各国に存在していますが、日本のものは少し他国とは異なります。
ギリシャに昔から現在まで受け継がれているアンソロジー(詞華集)という本は、作者別に並んでいます。
しかし日本の詞華集、「古今和歌集」「万葉集」はいずれもその並びではなく、季節毎によって分けられています。
春の部、夏の部、秋の部、冬の部、というように。
(祝いの歌、新年の歌、という様々な括りがありますが、ここでは四季にフォーカスします)
これを見ても、ヨーロッパは個を大切にするのに対して、日本人は昔から全体の調和を大切にしていたことを教えてくれます。
これだけ四季が豊かで、昔から四季を大切にしてきた民族はいません。だからこそ、季節を分けて楽しむという文化を忘れずに、洋服に改めて持ち込んでいただきたいのです。
和装をされている方はそのことをよく理解されています。
和装の世界では、四季よりももっと細分化されています。
6月にしか着てはいけない柄や素材、7月にしか、、、
と、その月を愉しむ文化が未だに残っています。
そうすることによって、もちろん一着一着を年間通して着られる日は減ります。その分、その一着一着を長い年月通して飽きずに着続けていくことができます。
わたしは夏は麻、冬はツイード、フランネル、と決めています。冬が終わり、春になると、ツイードやフランネルが着られなくなる悲しみよりも、もうすぐ麻が着られる!と次の季節への楽しみが勝るようになっています。
オールシーズン、通年物を着ていると、食べ物や植物、自然の変化にも疎くなるでしょう。春には野草、葉物系が美味しくなり、夏にはあらゆる野菜たちがすくすく大きくなっていきます。秋の味覚、冬の味覚と、洋服を通じて、季節を楽しむことを知れることは、結果的に人生を深く愉しむことに繋がっていくとわたしは思います。
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