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第3章 ジャケット
ブレザーの歴史
まず、現代のファッションの源流は、ほとんどが英国から始まっている事は、否定する事はできません。
そして、英国のファッションは、スポーツウェアを起源とするものが数多くあります。
例えば、ポロコート、ノーフォークジャケット、ニッカーボッカーズ、ポロシャツ、ラグビー、ジャージ、ハンチング、フィッシング、バック、ゴルフ、テニス、数えればキリがないほど、現代我々がカジュアルで楽しんでいる洋服の多くが、スポーツから始まっているものばかりです。
これには、イギリス人の精神性から来ているものがあります。
著「イギリス魂」の一節にこのような文章があります。
「肉体的に衰えること、肉体の怠惰を放置したままでいること、運動への好みを失うこと、これらはしたがって、イギリスでは道徳的医師の衰えを意味する」
そのような精神性から、英国では自分自身の体を整えることは、個人が果たすべき義務の一つとなっていると言われています。
イギリスの格言で、キープフィット”健康であれ”という言葉があるのですが、これこそまさに英国人の道徳として古くから根付いている考え方です。
このスポーツ信仰のファッションの一つの完成形こそ、ブレザーなのです。
ブレザーの始まり
ブレザーの前身の誕生は1837年と言われています。
ヴィクトリア女王が英国軍艦ブレイザー号を訪問した時です。
だらしない格好をした隊員たちをなんとかスマートに見せたいと考えた艦長は、ネイビーブルーのサージ(学制服に使われる、肉厚な綾織の生地)で上着を作り、英国海軍の真鍮ボタンを付けて彼らに着せたことが始まりとされています。
この上着が女王の評価が高かったことから、急ぎで揃えたジャケットはその後、ユニフォームとなりました。
ですが、その頃のジャケットは今のブレザーの形ではなく、ピージャケット(ピーコート)のような形でした。
そこからブレザーは学生のユニフォームへと姿を変えていきます。
1829年6月、イギリステムズ川に行って、オックスフォードとケンブリッジのボートレースの対抗戦が行われました。
ちなみに、オックスフォード大学のボートクラブが設立されたのは、1815年。ケンブリッジは1818年。
1829年に第回のボートレース対抗戦が行われるまでは、それぞれ独自に練習をしていましたが、この年に初めて対抗戦が行われることになりました。
ちなみに、この時にはまだブレザーは誕生しておりません。この時の両校の選手の服装は、オックスフォードチームが、白いキャンバス地のスラックスに、濃紺の横縞模様のジャージという姿。
一方、ケンブリッジは、白いシャツの上からピンクの帯を結んだスタイルだったそうで、なかなか想像が難しいスタイルです。
その頃は両校の対抗レースは毎年行われるものではなく、不定期で行われていたものでした。
時代は進み、1877年に行われた対抗ボートレースでは、ケンブリッジからは、セントジョーンズカレッジのレディーマーガレットボートクラブが選抜されました。
その時、そのクラブの選手たちが着ていたのが、まさに揃いの真紅のユニフォームだったのです。
ここからはあくまで推測になってしまうのですが、もちろんその上着を着たまま、ボートに乗るわけでもなく、ボートに乗る前に一斉にその上着を脱いだのだと思われます。
その姿を見た観客から、
「おお、ブレイザー!!」
と完成が湧き上がったそうです。(なんだか想像がつきますよね)
ブレイザーとは、「燃えるような」という意味合いで、そのあまりにも勇ましく美しいあり方に、最高の賛辞を与えたのだと思います。
そのことから、ブレザーの誕生年は1877年頃と言われています。(オックスフォード英語辞典では、ブレザーが初めて誕生した年を1880年としている)
ブレザーの形の変化
先ほどの話に戻りますが、ブレザーの原型となる洋服は何かとなりますと、1830年代に登場した、イギリスの水夫や船員が着ていたピージャケット(ピーコート)がそれに当たります。
ピーコートをイメージしていただければわかりやすいと思いますが、ダブルの前立てで、フロントのポケットは、縦型で手を横に入れる形です。襟の形も、ブレザーのようなテーラード型の襟ではなく、大振りなバルカラーのような形です。
現在のテーラードと異なり、ウェストの絞りもなく、簡素な作りです。
それが1860年代に入ると、背中には、サイドベンツがつき、襟も小ぶりな形へと変わり、前のポケットも縦型ではなく、フラップ型へと変化していきました。この頃の形を”リーファー”と呼びます。
このリーファーは名前の通り、まだ紳士の着る洋服ではなく、水夫や船員などが、船で働くときに羽織る上着でした。ですが、ここから徐々に、子供服から採用され始め、一般市民も似たような形の洋服を着ていくようになります。
リーファーがダブルブレストだったのに対し、ブレザーはシングルへと変化していきました。
ですが、ここは素直に変化するのも難しい問題があります。
なぜかと言いますと、ケンブリッジの学生は上流階級の子供たちが大半でした。それがもともとは船員が着ていたリーファーを羽織るのは、精神的に快く着られるものではないという事。
そのようなところから、リーファーの形の良い面は残しながら、違う洋服に見立てあげようとしたのではないかと推測できます。
ですが初期のブレザーは、リーファーの形を強く受け継いでいるところがあります。それがズバリ、フロントのダーツが入っていない、ルーズなシルエットということ。
これは初期のブルックスブラザーズが、まさにこのシルエットでスーツやブレザーを作り続けていました。
まさにアメリカントラッドのI型シルエット(ボックスシルエット)と呼ばれる、ウェストを絞らない、普遍的な形は、このピージャケットから始まり、リーファーへと引き継がれ、ブレザーが開花させたものなのです。
そして、ブレザーは、1890年代には一般化し、対して、リーファーはその頃から徐々に姿を消していきました。
ブレザーの仕立てについて
ブレザーの歴史をたどってみますと、まず素材は厚手のフランネルが挙げられます。より高密度なメルトンでも、古風なブレザーの雰囲気が出てよろしいと思います。
より古典的に行くのであれば、前ボタンは4つボタンで上3つ掛けというスタイルがありますが、私はこのスタイルは個人的には現代ではあまりお勧めいたしません。
やはり装いは、今の時代との空気感とすり合わせることも大切だと私は思っているからです。
そのようにバランスを考えますと、3つボタンで上2つ掛けというスタイルか、3つボタンの段返り、この位の形にするのがよろしいと思います。
内側の仕立ては、より本格的に作ってみるのであれば、総裏地ではなく、一重仕立てで作ってみるのがよろしいでしょう。
ブレザーはもともとは学生のユニフォームでしたので、良い意味で丁寧に作るのではなく、あえて簡素に作る方がブレザーらしい雰囲気が出るという考え方もあります。
ですが、これももちろんバランスです。
フロントのデザインであれば、スリーパッチポケットにしますと、よりスポーティなブレザーらしい顔つきになります。
スリーパッチというのは、胸ポケットと腰のポケットの3箇所がアウトポケットになっているデザインのことです。
海軍のブレザーのポケットはフラップポケットですが、スポーツ、スクール用のブレザーのポケットは、胸ポケットまでパッチポケットになったスリーパッチポケットのデザインが正しいです。
ボタンは忠実に再現するようでしたら、真鍮を使うとクラシックな雰囲気が出ます。
模様付きのボタンの場合は、そのボタンが何かのクラブや大学、軍隊に属しているものかどうかを知る必要があります。
日本ではそんなことは起こりませんが、うっかり一目惚れで見つけて付けたボタンが、海外の大学のボタンで、そこの卒業生と間違えられてしまう、なんていうことも、、まぁ、日本では考えられませんが。
模様のないボタンのものは平らなものが正統派で、模様のあるものは半球型のものが望ましいです。
バックデザインで言いますと、古いブレザーは背中が1枚で仕立てられていたということも、重要です。
背中の真ん中の縫い目がない形になりますので、当然ながらセンターベントではなく、ノーベントでした。
この1枚仕立ての背中も、前述したリーファーの形から生まれていたものです。
ここまでざっと、ブレザーの歴史についてお話しいたしましたが、ここまで理解してみて、そっくりそのままこの仕様でいこうというのもよろしいと思いますし、理解をした上で、自分なりのブレザーを選ぶのもよろしいと思います。
ネイビーフランネルのブレザーを手にした後には、ブラックウォッチ柄などを揃えてみるのもよろしいでしょう。シングルを手にしたら、次はダブルもいいなという考えもあります。
ブレザー1つとっても、終わりがありません。
ブレザーの形
<BERUNのBlazer>
一般的に有名なアメリカントラッドのスタイルのデザインはほぼ確立されています。ネイビーのフランネル生地に段返りの3つボタン、ポケットはパッチポケットでセンターベント(もしくはフックベント)というシンプルな仕様です。ボタンはゴールド(時にシルバー)のメタルボタンで、袖口のボタンは2個。これがアメリカントラッドのブレザースタイルです。
下には幅広のフランネルトラウザーズを合わせ、オックスフォード生地のボタンダウンシャツ、タイはレジメンタルタイという定番のコーディネートと言われています。
ちなみに「(※)フランネル」という生地は、日本語では「フラノ」とよばれています。これは古いウェールズ語の”グワレン(gwalen)”=「ウール地」というところからきているといわれています。
(※)フランネル(flannel)=紡毛素材。表面が起毛がかった生地。厚みがあり、空気を含むため暖かく、冬の素材としてよく用いられます。
BERUNで作るブレザーは英国式のため、少しスタイルは異なります。生地は冬用であればフランネル、春秋用のものであれば、モヘアが混じった光沢感とハリのある生地を主に使います。
ボタンはシルバーで、サイドベンツ。ジャケットに趣向性は極力持たせず、コーディネートでスタイルを作っていくようにシンプルな作りにしています。
シンプルだからこそ、シルエットや素材感が本当に大切です。だからこそ、時代に流されないブレザーは1着オーダーをしておくと、長く活躍できるアイテムになります。
<メタルボタンにサイドベンツ>
アイビーブーム真っ盛りで育った初老紳士の方々は、好んでブレザーを着ていたことがあると思いますが、今の若い年代の方は、制服以外で着用したことのある人は少ないのではないでしょうか。ブレザーはメンズトラッドファションの”柱”ともいえるアイテムです。合わせ方は無限大で、フォーマルに着ることもカジュアルに着ることも可能なアイテムです。
たとえば前述しましたように、グレーのトラウザーズを履き、タイ(ボウタイでもいいですね)を合わせるだけで、結婚式の二次会にも行けるほど、カチッとした装いになります。
伝統的な合わせは白のフランネルのトラウザーズに、白のホワイトバックス・シューズ(白のスウェードシューズ)を履くスタイルです。想像するだけで格好いいですね。
デニムを履き、ボタンダウンシャツ、ニットタイやレジメンタルタイなんかで合わせると、アメリカの伝統的なブレザースタイルになります。
ビジネスで着られたい方で、メタルボタンが気になる方もいらっしゃると思いますが、ブレザーのメタルボタンは正統派のスタイルです。むしろ目上の方に会う場合は「しっかりとしたブレザーを着ているな」と思ってもらえると思います。年上の方であればある程、ブレザーに好感をもつ方は多いはずです。
もしくは夏のブレザーはメタルボタンではなく、貝ボタンにしてもいいと思います。そう考えると、ブレザーは普遍的で、かつシーズンも問わない大変便利な一着です。
ブレザーほど、着こなしの幅が無限大に広いアイテムはありません。自分らしさを出すこともできますし、王道に忠実にいくこともできます。ぜひ、ベーシックな一着を揃えられることをお勧めします。
最終編集 2026年6月
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