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第3章 ジャケット
ブレザーをオーダーしてみよう
アメリカのアイビースタイルのなかで好まれているブレザーですが、発祥は英国です。
ブレザーの誕生は1837年。
ヴィクトリア女王が英国軍艦ブレイザー号を訪問した時です。
だらしない格好をした隊員たちをなんとかスマートに見せたいと考えた艦長は、ネイビーブルーのサージ(学制服に使われる、肉厚な綾織の生地)で上着を作り、英国海軍の真鍮ボタンを付けて彼らに着せたことが始まりとされています。
この上着が女王の評価が高かったことから、急ぎで揃えたジャケットはその後、ユニフォームとなりました。
このブレイザーには前身の形がありまして、それは「リーファー」と呼ばれる上着です。
帆(リーフ)を巻き込む作業をやっていた将校候補生が着ていたもので、ブレイザーよりも更に厚地のものを着ていました。
リーファーもブレイザーも、伝統的にはダブルで仕立てられるもので、色はネイビーブルーが使われていました。
タウンユースになると、サージからフランネルの生地を使うようになり、より軽いブレイザーが求められるようになっていきます。
ボタンは忠実に再現するようでしたら、真鍮を使うとクラシックな雰囲気が出ます。
模様付きのボタンの場合は、そのボタンが何かのクラブや大学、軍隊に属しているものかどうかを知る必要があります。
日本ではそんなことは起こりませんが、うっかり一目惚れで見つけて付けたボタンが、海外の大学のボタンで、そこの卒業生と間違えられてしまう、なんていうことも、、まぁ、日本では考えられませんね笑
模様のないボタンのものは平らなものが正統派で、模様のあるものは半球型のものが望ましいです。
海軍のブレイザーのポケットはフラップポケットですが、スポーツ、スクール用のブレイザーのポケットは、胸ポケットまでパッチポケットになったスリーパッチポケットのデザインが正しいです。
サマーブレイザー
ネイビーではなく、色や柄が入った「サマーブレイザー」にはまた別の物語があります。このような話には説がいろいろありますので、何が正しいかではなく、あらゆる話を知り、自分なりに解釈することが面白いと思います。
1829年、ケンブリッジ大学とオックスフォード大学の学生たちによるボートレースが、イギリス、テムズ川で行われました。そのときにケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジのボート部レディ・マーガレット・ボートクラブの学生たちが、真っ赤な母校のカレッジカラーであるフランネル素材のブレザーを着用していたことが、「燃えるような赤(Blaze)」ブレザーのシングルブレステッドの始まりと言われています。
19世紀半ばにはあらゆるスポーツでも広く着用されるようになり、1890年頃には、辞書にフランネルのカジュアルなジャケットをブレザーというと採用されるようになりました。20世紀以降にはアメリカにもわたり、アイビーリーグの学生たちもブレザーを好んで着用していくことになります。
ブレザーの形
<BERUNのBlazer>
一般的に有名なアメリカントラッドのスタイルのデザインはほぼ確立されています。ネイビーのフランネル生地に段返りの3つボタン、ポケットはパッチポケットでセンターベント(もしくはフックベント)というシンプルな仕様です。ボタンはゴールド(時にシルバー)のメタルボタンで、袖口のボタンは2個。これがアメリカントラッドのブレザースタイルです。
下には幅広のフランネルパンツを合わせ、オックスフォード生地のボタンダウンシャツ、タイはレジメンタルタイというコーディネートが定番と言われています。
ちなみに「(※)フランネル」という生地は、日本語では「フラノ」とよばれています。これは古いウェールズ語の”グワレン(gwalen)”=「ウール地」というところからきているといわれています。
(※)フランネル(flannel)=紡毛素材。表面が起毛がかった生地。厚みがあり、空気を含むため暖かく、冬の素材としてよく用いられます。
BERUNで作るブレザーは英国式のため、少しスタイルは異なります。生地は冬用であればフランネル、春秋用のものであれば、モヘアが混じった光沢感とハリのある生地を主に使います。
ボタンはシルバーで、サイドベンツ。ジャケットに趣向性は極力持たせず、コーディネートでスタイルを作っていくようにシンプルな作りにしています。
シンプルだからこそ、シルエットや素材感が本当に大切です。だからこそ、時代に流されないブレザーは1着オーダーをしておくと、長く活躍できるアイテムになります。
<メタルボタンにサイドベンツ>
IVYブーム真っ盛りで育った初老紳士の方々は、好んでブレザーを着ていたことがあると思いますが、今の若い年代の方は、制服以外で着用したことのある人は少ないのではないでしょうか。ブレザーはメンズトラッドファションの”柱”ともいえるアイテムです。合わせ方は無限大で、フォーマルに着ることもカジュアルに着ることも可能なアイテムです。
たとえば前述しましたように、グレーのトラウザーズを履き、タイ(ボウタイでもいいですね)を合わせるだけで、結婚式の二次会にも行けるほど、カチッとした装いになります。
伝統的な合わせは白のフランネルのトラウザーズに、白のホワイトバックス・シューズ(白のスウェードシューズ)を履くスタイルです。想像するだけで格好いいですね。
デニムを履き、ボタンダウンシャツ、ニットタイやレジメンタルタイなんかで合わせると、アメリカの伝統的なブレザースタイルになります。
ビジネスで着られたい方で、メタルボタンが気になる方もいらっしゃると思いますが、ブレザーのメタルボタンは正統派のスタイルです。むしろ目上の方に会う場合は「しっかりとしたブレザーを着ているな」と思ってもらえると思います。年上の方であればある程、ブレザーに好感をもつ方は多いはずです。
もしくは夏のブレザーはメタルボタンではなく、貝ボタンにしてもいいと思います。そう考えると、ブレザーは普遍的で、かつシーズンも問わない大変便利な一着です。
ブレザーほど、着こなしの幅が無限大に広いアイテムはありません。自分らしさを出すこともできますし、王道に忠実にいくこともできます。ぜひ、ベーシックな一着を揃えられることをお勧めします。
最終編集 2024年5月
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