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第1章 洋服の哲学
全体像を見ることの大切さ
「日本人は近眼である」という言い方は、ファッション業界で使われる表現です。これは、「日本人は洋服えらびの視野が狭すぎる」という意味です。
日本人は洋服に限らず、何事にもコレクター精神が強い人たちが多いです。それが影響し、ひとつひとつのアイテムをグッズ感覚で集めている方が大勢います。
洋服のコーディネートで一番大切なのは、個々のアイテムの存在感ではなく、全体のトータルバランスです。
それを理解せずに洋服をそれぞれ気に入ったものを合わせてしまうため、ちぐはぐなコーディネートになってしまうのです。
そのほか、日本人で多いのは、スーツは安価な既製服なのにも関わらず、ネクタイはファンシーなラグジュアリーブランドのものを着けている、というコーディネートです。
これは欧米ではあまりスマートなコーディネートだと思われません。洋服に精通している方から見ると一瞬で、「洋服のことを知らないんだな、きっとパートナーからもらったんだろう」と見抜かれてしまいます。
欧州では、女性が男性にネクタイをプレゼントすることをあまりしません。なぜかと言いますと、男性がネクタイを着けて仕事をする場面がどういうシーンなのか、そのパートナーの方は想像できないからです。
どのような人に会い、どういう立場で仕事をしているのか、それを理解した上でのプレゼントならいいのですが、そこまで考えてネクタイを選んでいる人はそう多くないと思います。
男性の方も、洋服に一家言を持っている方が少ないため、もらった高価なネクタイは喜んで着ける方が多いです。
結果、シックなスーツの世界観に、ファンシーな柄のネクタイが入り込んでしまい、可愛らしい雰囲気になってしまうのです。
洋服を全身そろえることと、自分の部屋をコーディネートすることはとても似ています。6畳一間のボロアパートにCassina(カッシーナ)の高級ソファをおいても引き立たないように、全体の水準をあげていくことが大切です。
よい仕立てのスーツを着ても、シャツやネクタイの組み合わせがいまひとつで、靴も安物の革靴であれば、コーディネイトの基準はその安価なアイテムに引き下がってしまいます。
全体のコーディネートを木製の風呂桶に例えてみます。ぜひイメージしてみてください。
一つ一つの洋服のジャンルが一枚の縦の木で木桶が作られているとします。スーツだけが格好よく、他のアイテムはそれ以下のものだとします。スーツの板だけが長く、他が短い板で桶を作ると、結果的に短い板の高さまでしかお湯がたまりません。それと同じように、基準が低いところに目がいってしまうのです。
良い仕立てのスーツには、相応のVゾーン(シャツ、ネクタイ)や革靴を合わせましょう。
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