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第7章 革靴
靴は愛してたくさん履く
「靴は履いているとすぐ傷がつくし、営業で毎日歩き回るから痛むしすぐダメになるから、安い物ですませている」
というお方がいらっしゃいますが、わたしは非常にもったいない考え方だと思ってしまいます。
靴は高価な物であればあるほど上質な革を使用しているため、傷に対して復元作用があります。傷が付いた部分にクリームを塗り、しっかりとメンテナンスをすると、外見からはほとんどわからないくらいまで回復します。そして傷がついたとしても、それがアジになっていきます。また何より上質な靴は履き心地がいいです。その心地よさを知らずに、革靴は痛いからいやだと考えるのは残念です。
ピカピカのままおそるおそる履いているより、たくさん履いてしっかりとアフターケアをするほうが、年月が経ったときの靴の風格は素晴らしいものになっています。
人は関わるものに対して、手がかかるものほど愛着を抱く生き物だと思います。靴やスーツをブラッシングしている瞬間、シャツの襟と袖を洗っている瞬間、なんとも言えない幸福感に浸れるはずです。
洋服を好きになるには、まず愛着を持てる物を購入することです。手をかけなくてはもったいない、と思えるくらいものを揃えていきましょう。そうすることで、その服との絆はどんどん結ばれていきます。 また、せっかく高価な靴を購入しても、歩き方や扱い方がわるければすぐにダメになってしまいます。
かかとから力強く音を鳴らしながら歩く癖があるようでしたら、これはやめた方がいいです。これはかかとの減りを早めるのもそうですが、視覚的にも聴覚的にも、周りにあまりいい影響を与えません。かかとの極端な減り方は、履いている人の性格を映し出します。
感覚的な話ですが、かかととつま先が“ほぼ”同時に着くくらいのイメージをもって歩くと、ちょうどかかとが自然に先につき、音もならずスマートに歩けます。変な歩き方をしていると、必ず靴に異常があらわれます。足を巻き込む癖がある人は、内側に擦り傷が出てきます。(この歩き方の方は非常に多いです)
インソールを見てみると、癖のある歩き方をしている方のインソールは、偏った沈み方をしているものです。綺麗に自然な足型の形で、真ん中から沈んでいくのが理想的です。過度なスポーツ、普段から重い鞄を片手で持ち歩いているような方は、歩き方が偏っている可能性があります。もし気になるようでしたら、一度歩き方を意識し直してみてください。
ウォータークリーニング
こちらの靴は営業をされているわたしのお客様の靴をメンテナンスで預かったものです。ご自身で手入れをされる方なのですが、いくら手をかけても取れない汚れが出てきてしまったということです。雨の日に履いていると、革が水分を含み、中から外に水ぶくれのように浮き上がってくる現象が起こります。また、足汗をよくかかれる方は、内側にたまった塩分が外に吹き出してきて、一見カビにも見えるような、白く塩をふいたような状態になることもあります。
わたしはたくさん履いて、外からできるメンテナンスはすべてやりきったものの、それでも綺麗にならないと相談をされた場合は、ウォータークリーニングに出すようにしています。専門の業者が独自のスキルを使って革を痛めずに水で丸洗いしてくれるサービスです。
こちらがウォータークリーニング後の靴です。表面の凹凸は消え、履き古した靴が新品のように生まれ変わりました。
このように、履き続けていくことで出てくる深みを愛することが、革靴の醍醐味だと思います。
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