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第9章 オーバーコート
チェスターフィールドコート
チェスターフィールド・コート
「チェスターフィールド・コート」は正装用コートで、最も格調高いコートといわれています。名前の由来はチェスターフィールド伯爵が好んで着ていたことからこの名がつけられました。今なお続く洋服の用語は、このような人や地域などからつけられた名前が多く残っています。色はブラック・チャコールグレー・ダークネイビーの暗色系で、カシミアのような上質な生地を使い、前立はシングルブレステッドのノッチドラペル。3つボタンのフライフロント(隠しボタン式)、ウエストをジャケットのように綺麗に絞り、モーニング・コートなどの、後ろのテールがしっかりと隠れるほどのロング丈の物が本格的なものといわれています。
またこのコートの最大の特徴は、上襟部分に黒のベルベットをあしらっていることです。この黒襟のベルベットの由来は、フランス革命で処刑されたルイ16世へのとむらいを示す意味を込めて、ヨーロッパの貴族たちが首に巻いた黒い布から派生したものといわれています。今では歴史の一部として、ディテールが残されています。しかし非常にフォーマル度が高いため、現代ではあまり見かけることはなくなりました。
昨今人気が出てきているこのコートはわたしが大好きなコートです。最近では短縮してチェスターコートといわれているのを耳にします。19世紀にチェスターフィールド伯爵が初めて着ていたことから、この名がついたといわれています。
セミチェスター・コート
今チェスターコートといわれているものは、実際には正式なチェスターフィールドコートではなく、セミチェスターとよばれるものです。チェスターフィールド・コートは格好よすぎる、普段のスーツの上にさらっと着たいということでしたら、「セミチェスター・コート」がいいでしょう。
これは上襟のベルベットやフライフロントを取りはずした、カジュアルダウンしたチェスターフィールドです。素材もカシミアのような上質なものでなく、用途に合わせてよりカジュアルな素材を用いても大丈夫です。
冠婚葬祭などの儀式や、パーティのようなフォーマルな機会に着用するドレッシーな表情をもつコートを総称してフォーマルコートとよんでいますが、これに値するコートは「チェスターフィールド・コート」しかないといわれています。しかし現在であれば、セミチェスター・コートを選び、とやかく言われる場所は相当な上流階級でなければないと思います。
冬のパーティには必ずコートを必要としますが、くれぐれもトレンチコート、またはダッフルコートなどのようなカジュアルなコートは着ていかないようにしましょう。歴史を振り返るとトレンチコートは軍服であり、ダッフルコートは漁師が着ていた服であり、正装をする場面で着用して行く洋服ではありません。ナイロン素材のぺらぺらなコートなどはもってのほかです。
<セミチェスターフィールドコート>
セミチェスターコートというのは、それらのディテールを廃したものをさします。丈も膝上くらいのものが主流です。
現代のコートは丈が短くなっていっていますが、わたしはその人の体系をみた上で、可能な範囲で長めにすることをお勧めしています。
そもそも丈を短くしたがる業界側に立って考えてみると、例えば丈が80cmのコートと、110cmのものがあれば、1着で長さが30cm変わります。それが既製品で何百着ともなれば、1着にかかるコストが明確に違うことがわかります。それでいてコートと銘打っておけば、生地のコストをできる限り下げた上で、ジャケットよりも高いコートとしてものを販売することができます。
最近は機能性機能性と二言目にはそういう言葉が飛び交う時代になりました。洗えるスーツ、スーツにリュック、、そういうスタイルをわるくいうつもりはありません。実際便利でしょう。ですが、こういったクラシックな装いをするのであれば、中途半端なことをしていては一番みっともなく見えてしまいます。チェスターフィールドコートをカジュアルなハーフコートのような着方をしてしまっては、本物に触れる体験もなく、大きな感動、喜びもありません。しっかりと厚みのある素材でたっぷりと生地を使ったコートで、重みを感じる。それが歴史を感じるということだと思います。
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