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第11章 その他
わたしが天然素材にこだわる理由
昨今は科学技術の発達で、便利な化学繊維がたくさん増えてきています。薄手のインナー1枚だけで身体があたたかいという物も発売され、技術の進歩に驚くばかりです。しかしこんな時代でも、合成素材はなるべく着ないようにしているという人たちもいます。わたしもそのうちのひとりです。
衣服文化は、人類が誕生してすぐにはじまったといっても過言ではありません。その中で合成素材が発明され、多様化されはじめたのは1960年代頃からと、最近の話です。それまでは、合成技術で高性能な生地をつくることが難しかったため、天然素材を使用していました。しかし、大量に安価な価格で生産できる合成素材が生まれ、洋服の価値と価格帯は下落していきました。今まで高価で有限であった天然素材に代わり、無限に安価な価格でつくれる合成素材の誕生を、メーカー側はどんどん多用していきます。

そもそも、人間の身体は天然でできています。そんな身体に合成素材を身に着けることで、どういう作用が起きるでしょうか。
まず気をつけていただきたいのが、冬の時期の「静電気」です。ポリエステルやナイロン、アクリルなどのような合成素材は、身体にまとうことで静電気を大量に帯電させます。静電気が体内に溜まることで抗体が下がり、身体の免疫力が落ちると言われております。
また、静電気はストレスの増加にもつながり、身体的に悪影響をおよぼします。かなりざっくりとした説明ですが、こういった身体の作用は科学的に検証されております。しかし、売り手側にはメリットがないので公には出していません。
ファストファッションで売られているような化学繊維(例えばポリエステル)100%のニットを着て過ごす日と、天然のウール100%のニットを着て過ごす日を分けてみてください。天然のニットを着ているときは、あまり静電気を感じることはないはずです。合成素材を着ているときとでは、脱いだ瞬間の帯電している感覚が全く違うと思います。
しかし、合成素材のメリットもあります。それは、「安さ」と「丈夫さ」と、「手入れをせずとも長持ちする」という点です。
反対に天然素材は、「物の価値と適正な価格(現代では高く感じる)」、「重い」、「手入れをしなければ寿命が短くなる」という側面があります。
また天然素材には、GORE-TEXのような目に余るような機能美もありません。そこだけで比べてしまうと、たいていの人は安価で丈夫な合成素材を選ぶでしょう。
しかし、合成素材はやはり生きている物ではありません。着ていくごとにアジが出ることはなく、購入した日が一番きれいな状態です。ダメになったら捨て、買い替えるものです。
天然素材はコットン、リネン、ウール、カシミア、アルパカ、レザーなど、すべて地球で生まれたものです。これらをしっかりとケアして長く着続けていくことで、その人とともに歩んできた歴史が、その洋服の深みとなりアジとなり、魅力が増していきます。洋服好きが天然素材にこだわる理由はここにあるのです。
車や時計も高価なものを買えば、購入後もメンテナンスなどでランニングコストがかかっていきますが、洋服も同じものだとお考えください。信頼のおけるクリーニング屋は相応の値段をとります。穴や汚れを修復する金額も高いです。長年修理していると、購入した価格を修理代が上回るときがくるでしょう。しかしもしその時点で、10年以上ともに付き合ってきたパートナーであったなら、手放すという選択はできないくらいの愛着がわいてくると思います。
そのくらいひとつの洋服と長く向き合い続ける愉しみがあるのが、天然素材のよさです。
洒落者は、しっかりとした高品質のものを購入し、手入れをしながらその洋服と長く付き合っていきます。
よいものは20~30年と着ることができます。安物買いの銭失いをせず、高品質なものを、しっかりとした対価を払って付き合う洋服を探していきたいものです。
古着、ヴィンテージ好きのわたしとしては、現代の洋服が将来の古着になるとは思えないのです。最先端の技術で安価に作られた化繊素材の洋服が、30年後もマーケットに残り続けるとは考えられません。本当に良いものは、天然素材で作られたもので、時代性を感じるものだと私は思います。
ですが、私も化学繊維の洋服を着るときはあります。どのような場面かと言いますと、
・旅行のとき(下着など)
・アウトドア
・スポーツ
このような場面では、前向きに化学繊維のものを着用します。
もちろんこのような場面でも、クラシックに全てウールやコットンで済ませることもできるのですが、私はここはバランスだと思っております。(昔はスキーウェアもウールのニットでしたから。そこまで遡ることもできるのです)
その場でのパフォーマンスがより発揮される衣服を選ぶ。
というのが正解だと思うのです。
日常的に終始アクティブな行動をするお方でしたら、化学繊維を多用してもいいでしょう。ですが、そうではないお方でしたら、日常的に着る洋服は天然素材のものを愉しみ、身体を動かすときは化学繊維の力を借りる。というように、バランスを考えるのがよろしいのではないかと思います。
最終編集2026年6月
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